- 1590~1900
-
1590 Z. Janssen, H. Janssen 2枚の凸レンズを組み合わせ、初めて複合顕微鏡を作った。 1651 W. Harvey すべての生物(ヒトを含む)は卵から始まるという概念を提唱した。 1665 R. Hooke "Micrographia"を著し、細胞を初めて記載した。 1694 J.R. Camerarius 初めて受粉実験を行い、顕花植物に性が存在することを報告した。 1735 C.V. Linne(現在ではラテン語つづりで Linnaeus) "Systema Naturae"の第1版を著す。生涯に分類学の著作を、16版完成した。第10版は、彼の植物に関する著作"Species Plantarum"とともに、動物についての科学的命名法の出発点となり、今日の二名法によるリンネの体系を創り出した。Homo sapiens(ヒト)を始め、約7,700種の植物、約4,400種の動物の命名は現在も使われている。種の不変およびその客観的分類に関するLinneの主張は、種の起源に関する方法論を生み出した。 1761~67 J.G. Kolreuter タバコ属(Nicotiana)各種の間で交雑を行い、雑種が外観上量的に両親の中間で、正逆交雑も差がないことを知り、両親は次代の形質に均等に影響するとした。 1769 L. Spallanzani 栄養培地中の微生物の"自然発生"は容器を密閉して、30分以上沸騰処理すれば防げることを示す。1780年には両生類を使って人工授精実験を行い、受精と発生には、卵と精液の物理的接触が必要であることを示した。 1798 T.R. Malthus "人口論(An Essay on the Principle of Population)"を匿名で著した。この論文は1838年Darwinに生存競争と適者生存の概念を示唆した。 1798 Edward Jenner "イングランド西部の一部、特にグロスターシアにおいて発見され、牛痘の名で知られる病気、Variolae Vaccinaeの原因と影響に関する調査"を著した。この中で牛痘によるワクチンが天然痘の予防に有効であることを初めて示し、有効な免疫の原理を確立し、免疫学を創始した。 1809 J.B. de Monet Lamarck 適応形質の不断の強化と完成によって種は徐々に新しい種へと変化しうること、また獲得形質が子孫に伝えられることを提唱した。 1818 W.C. Wells アフリカに住むヒトの集団は、風土病に対する抵抗性の程度に応じて選択されてきたことを示唆し、自然選択の原理を初めて明確に述べた。 1820 C.F. Nasse ヒトの血友病の遺伝が伴性であることを記述した。 1822~24 T.A. Knight, J. Goss, A. Seton それぞれ独自にエンドウの交雑実験を行い、F1に優性形質が現れ、F2において種々の遺伝形質が分離することを観察した。しかし、分離比や後代検定は研究行わなかった。 1825 F.V. Raspail デンプンのヨウ素反応を用いて、組織化学の基礎を作った。 1827 K.E. von Baer ヒトの卵子について初めて正確な記述を行った。 1830 G.B. Amici 花粉管が花柱内を伸び、胚珠に入ることを示した。 1831 R. Brown 細胞内の核を記述した。 1831 C. Darwin 12月27日、ビーグル号が世界一周航海のためにプリマス港を出航した。この艦には22歳の博物学者Charles Darwinが乗船。1833年9月15日、ビーグル号はガラパゴス諸島に到着。Darwinは動植物の生活を調査するために5週間滞在した。 1837 C. Darwin 他の専門家たちとともにガラパゴス諸島に採集調査に行き、いろいろな島に多くの種が固有に存在していることを知る。この事実は、それぞれの島に本島から由来した少数の種が移住し、それらの種からそれぞれの島の環境で生存できるように特殊化した新種が進化したことを示唆している。Darwinは、このような考えに基づいて、自然選択による進化論を支持するデータを集め始めた。 1837 Hugo von Mohl 葉緑体を、緑色植物の細胞中に存在する明確な構造体として初めて記載した。 1838 G.J. Mulder 化学論文にタンパク質(protein)という語を初めて使った。しかし、この用語は J.J. Berzeliusがつくったものである。 1838~39 M.J. Schleiden, T. Schwann 細胞説を展開。Schleidenは核内に核小体があることを記述した。 1841 A. Kolliker 精子が精巣内の細胞から変化した性細胞であることを示した。 1845 J. Dzierzon ミツバチでは雄バチが不受精卵から、ハタラキバチと女王バチは受精卵から孵化することを報告した。 1855 A.R. Wallace マレー諸島の動物相の研究を通じて地理的分化を示唆する証拠を集め、種が不変であるという定説に疑問をもつようになり、Darwinと同様の進化論を展開し始めた。 1855 R. Virchow 新しい細胞は既存の細胞の分裂によってのみ生じるという原理を発表した。 1856 Gregor Mendel オーストリアのBrunn(現チェコスロバキア)にあるアウグスチン修道院の修道士Mendelはエンドウ(Pisum sativum)の交雑実験を始めた。 1858 C. Darwin, A.R. Wallace ロンドンのリンネ学会で自然選択に基づく進化論を共同発表した。 1859 C. Darwin "種の起源(On the Origin of Species)"を著した。 1860 T.A.E. Klebs パラフィン包埋法を開発した。 1861 L. Pasteur 微生物の自然発生説に対し論理的反証を挙げた。 1865 G. Mendel 2月8日と3月8日に行われたBrunnの自然科学学会の月例会でエンドウの遺伝実験の結果とその解釈を報告した。 1866 G. Mendel "植物の交雑雑種の実験(Versuche uber Pflanzenhybriden)"が出版されたが無視された。 1869 F. Galton "Hereditary Genius"を著した。ヒトの家系を科学的に研究し、ヒトの知能が遺伝すると結論した。 1870 W. His ミクロトームを発明した。 1871 F. Miescher 核の単離方法を発表し、ヌクレイン(現在では核酸とタンパク質の混合物として知られる)の発見を報告した。 1872 J.T. Gulick オアフ島の谷に生息する陸生カタツムリの自然集団の殻の色の変異を記述した。このような動物の小集団が地理的に隔離されることが新種の形成の必要条件であることを示唆した。 1873 A. Schneider 有糸分裂を初めて記述した。 1875 F. Galton 行動に及ぼす遺伝と環境の相対的影響を知るのに、双生児の研究が有用であることを示した。 1875 O. Hertwig ウニの生殖に関する研究から、動植物ともに受精は雌雄の親由来の二つの核が物理的に結合したものであると結論した。 1875 E. Strasburger 種子植物の細胞分裂を記載した。 1876 O. Butschli 繊毛虫の核の二型性を記述した。 1877 H. Fol ヒトデの精子が卵内に侵入することを観察し、精子核がそこなわれずに卵内にはいり、雄性前核になることを報告した 1877 E. Abbe 顕微鏡光学理論に関する重要な研究の発表を始める。 1878 W. Kuhne enzyme(酵素)という言葉をつくりだした。 1879 W. Flemming サンショウウオの尾びれ上皮の有糸分裂の研究を行い、核分裂は染色体の縦分裂と、生じた娘染色分体の娘核への移動とからなることを示した。また、chromatin(染色質)という術語をつくりだした。 1881 R. Koch 現在も用いられている細菌の純粋培養法を開発した。 1882 W. Flemming ランプブラシ染色体を発見し、mitosis(有糸分裂)という術語をつくりだした。 1883 E. van Beneden 回虫の一種 Ascaris(この種の染色体数は2n=4であった)の減数分裂を研究。配偶子は体細胞の染色体の半数を含み、受精によって再び体細胞染色体数に戻ることを示した。哺乳類の受精に関するL述も行った。 1883 A. Weismann 動物の体細胞と生殖細胞の違いを指摘し、生殖細胞に起こった変化のみがそれ以降の世代に伝達されることを強調した。 1883 A.F.W. Schimper 葉緑体が分裂可能であること、緑色植物は葉緑素を含む生物と無色の生物との共生関係からできたと提案した。 1887 A. Weismann 染色体数の周期的な減数がすべての有性生物に起こるという仮説を提出した。 1888 T. Boveri 中心粒(centriole)を記載した。 1888 W. Waldeyer Roux(1883)の記載したヒモ状のものに対し、染色体(chromosome)という新語を作った。 1889 F. Galton "Natural Inheritance "を著した。集団における計量形質の定量的測定を行い、生物測定学と変異の統計学的研究の基礎をつくった。 1890 R. Altman 細胞中に"バイオブラスト"の存在を報告し、細胞内共生生物として住みつき、宿主の生命活動を担っている基本的な生物であると結論した。後に(1898年)、C. Bendaによりこのオルガネラはミトコンドリアと命名された。 1890 E. von Behring まえもって免疫した動物の血清には、免疫するのに用いた生物を特異的に殺傷する因子が含まれていることを示した。 1896 E.B. Wilson 「発生と遺伝における細胞」"The Cell in Development and Heredity"を著した。学界に大きい影響を与えたこの論文は、SchleidenとSchwannが細胞説を提唱して以来半世紀の間に得られた細胞学に関する情報の精華をまとめたものである。 1898 T. Boveri Parascaris equorumにおける染色体削減を記述した。 1899 S.G. Navashin 種子植物の重複受精を発見し、胚乳細胞は3倍体であると結論した。 1900 H. de Vries, C. Correns, E. Tschermak それぞれ独立にMendelの論文を再発見した。de VriesとCorrensは、Mendelの初期の研究に相当する交配実験を、数種の植物を用いて行い、独立に、同じ解釈に達した。Mendelの論文を読み、直ちにその重要性を認めた。W. Batesonもロンドンの王立学会における演説で Mendelの業績の重要性を力説した。 1900 K. Pearson カイ自乗検定法を確立した。 1900 K. Landsteiner ヒトの血液凝集反応を発見した。 1900 P. Ehrlich 抗原と抗体が互いに結合するのは、それらの相補的な構造によることを提案した。 - 1901~1950
-
1901 H. de Vries マツヨイグサOenotheraの遺伝物質に突然、自然発生的に生ずる根本的な変化に対して、突然変異(mutation)という言葉を与えた。 1901 T. H. Montgomery 半翅類の多数の種における精子形成を研究し、減数分裂においては母方の染色体は父方の染色体とのみ対合すると結論した。 1901 K. Landsteiner ヒトの血液型は3種類(A、B、C)に分類できると提示。C型は、後にO型とよばれるようになった。 1901 E. von Behring 血清療法の研究に対し、ノーベル賞を受賞した。 1902 C.E. McClung 各種昆虫においては、"アクセサリー染色体"をもつ精子と、もたない精子が同数つくられると報告。この余分な染色体が性を決定し、性は受精時に決定されると主張。これらは昆虫だけでなく、ヒトも含めた他の生物にも共通するとした。 1902 T. Boveri 一倍体、二倍体、異数体のウニの胚の発生を研究し、正常発生のためには完全な染色体組が必要であり、各染色体は別々の基本的な遺伝要因を持っていると結論した。 1902 W.S. Sutton 遺伝子どうしの独立な組合わせが減数分裂時の染色体対合によって生ずるという染色体説を提示。ある二価染色体の相同染色体のうちどちらがどちらの細胞に入るかという分離の原則は、他の二価染色体の分離とは独立に決まるので、異なる染色体に含まれる遺伝子は様々な組み合わせにより染色体毎に、独立に分布することになる。 1902 F. Hofmeister, E. Fischer タンパク質はアミノ酸が一定のペプチド結合を繰返して、連続的に重合することにより生成されることを提唱した。 1902~09 W. Bateson 遺伝学(genetics)、対立遺伝子(allelomorph)、ホモ接合体(homozygote)、ヘテロ接合体(heterozygote)、F1(雑種第一代)、F2(雑種第二代)、上位(epistatic) 遺伝子などの術語を導入した。 1907 R.G. Harrison カエルの中枢神経系の断片を体液中で培養し、神経突起の伸展を観察。組織培養の発明となった。 1907 E.F. Smith ある特殊な細菌 Agrobacterium tumefaciensが植物におけるクラウンゴール病の原因であることを示した。 1908 G.H. Hardy, W. Weinberg それぞれ独立に研究し、集団遺伝学におけるハーディ-ワインベルグの法則を公式化した。 1909 G.H. Shull 種トウモロコシの製造に自家受粉系統を使うことを主張。その結果実施された雑種トウモロコシ生産計画は数10億ドルの価値の食糧増産を生み出した。 1909 F.A. Janssens 非姉妹染色分体間の交換がキアズマをつくることを示唆した。 1909 C.C. Little マウスの同系繁殖系(現在のDBA)を作出する育種計画を提唱した。 1909 W. Johannsen インゲンマメの自殖系を使って種子の大きさの遺伝を研究し、見かけの形質と遺伝子構成とを区別する必要から、表現型 (phenotype)、 遺伝子型(genotype)という術語をつくった。遺伝子(gene)という用語もつくった。 1909 C. Correns, E. Bauer Mirabilis jalapa(オシロイバナ)、Pelargonium zonale(ゼラニウム)のような斑入り植物を使って葉緑体異常の遺伝研究を行い、正常な葉緑体を形成できない性質は非メンデル遺伝をすることがあることを発見した。 1909 H. Nilsson-Ehle コムギの種皮の色の量的遺伝の説明に多因子仮説を提唱した。 1910 T.H. Morgan ショウジョウバエにおいて白眼系統を発見し、その結果として伴性遺伝を発見。ショウジョウバエの遺伝学が始まった。 1910 W. Weinberg 少数家族のデータに適用した各種の確認法を用いて、ヒトの家系データから得られるメンデル分離の期待値の修正方法を発展させた。 1910 P. Rous ニワトリ肉腫の無細胞ろ過液の注射により、新たにおこさせることを示した。 1911 T.H. Morgan ショウジョウバエの白眼色、黄体色および小翅の遺伝子はX染色体に連関していると報告した。 1911 W.R.B. Robertson 直翅目の一つの種の中部動原体染色体は別種の二つの端部動原体染色体に相当するかもしれないと指摘。進化の過程で二つの端部動原体染色体が融合して中部動原体染色体が生じたのであろうと結論した。発見者に敬意を表してこのような全腕融合をロバートソン融合とよぶ。 1912 A. Wegener 大陸移動説を提案した。 1912 F. Rambousek ハエの幼虫の唾腺細胞内にみられる"横縞のヒモ状の物"は染色体であると示唆した。 1912 T.H. Morgan キイロショウジョウバエの雄では交差が起こらないことを示した。また伴性致死を初めて発見した。 1913 Y. Tanaka 雌ヘテロ型であるカイコガの雌では交差が起こらないことを報告した。 1913 W.H. Bragg, W.L. Bragg X線回折法が結晶の三次元原子構造を決定するために用いられることを示した。 1913 A.H. Sturtevant ショウジョウバエの連関概念を実験的に証明し、初めて遺伝地図をつくった。 1914 C.B. Bridges ショウジョウバエの減数分裂における非分離現象を見出した。 1914 C.C. Little マウスに移植された腫瘍が生着するか拒絶されるかには遺伝的な根拠があると主張した。 1915 F.W. Twort 細菌に感染するろ過性ウイルスを始めて分離した。 1915 J.B.S. Haldane, A.D. Sprunt, N.M. Haldane 脊椎動物(マウス)における連鎖の最初の実例を記載した。 1916 H.J. Muller ショウジョウバエにおいて遺伝的干渉を発見した。 1917 F. d'Herelle バクテリオファージ(bacteriophage)という名称を提唱し、ウイルス力価の検定法を開発した。 1917 O. Winge 高等植物の進化に倍数体が果たす重要な役割を指摘した。 1917 C.B. Bridges ショウジョウバエで初めて染色体の欠失を発見した。 1918 H. Spemann 胚の一部が、他の部分に刺激を与えて、形態分化を引き起こすことを示し(胚の誘導)、この領域をオーガナイザー(形成体)と命名した。 1918 H.J. Muller ショウジョウバエにおいて平衡致死現象を発見した。 1919 T.H. Morgan キイロショウジョウバエにおいて連関群の数と染色体の単相の数 (haploid number)は同一であることを示した。 1919 C.B. Bridges ショウジョウバエで染色体の重複を発見した。 1920 A.F. Blakeslee, J. Belling, M.E. Farnham チョウセンアサガオ(Datura stramonium)で三染色体性植物の存在を記述した。 1921 F.G. Banting, C.H. Best インシュリンを分離し、その生理学的特性を研究した。 1921 C.B. Bridges ショウジョウバエの一染色体個体(haploid, n=4)を最初に発見した。 1922 L.V. Morgan ショウジョウバエで付着型X染色体を発見した。 1922 A.F. Blakeslee, J. Belling, M.E. Farnham, A.D. Bergner Daturaで半数体を発見した。 1923 C.B. Bridges ショウジョウバエで染色体の転座を発見した。 1923 R. Feulgen, H. Rossenbeck DNAの存在確認に最もひろく使われる細胞化学的検定法を発表した。 1923 T. Svedberg 超遠心機を初めて作った。 1923 A.E. Boycott, C. Diver モノアラガイ(Limnea peregra)における殻の渦巻きの方向を支配する遅発性のメンデル遺伝を記述した。 1923 A.H. Sturtevant モノアラガイ(Limnea peregra)の殻の渦巻きの方向は母親の遺伝子型による卵の細胞質の性状によって決定されることを示唆した。 1923 J.K. Santos; H. Kihara, T. Ono; O. Winge SantosはElodeaで、H. KiharaとT. OnoはRumexで、O. WingeはHumulusで、これらの雌雄異株植物の性決定様式はXX-XY型であることを示した。 1925 C.B. Bridges 三倍体のショウジョウバエの後代に生じる異数体の細胞学的分析を行い、性決定に対する性染色体と常染色体の関係を確立した。 1925 A.H. Sturtevant ショウジョウバエのBar現象の解析を行い、位置効果を発見した。 1925 F. Bernstein ABO式血液型が一連の対立遺伝子により決定されることを示した。 1925 T.H. Goodspeed, R.E. Clausen タバコ(Nicotiana)の複倍数体を作出した。 1926 E.G. Anderson ショウジョウバエのX染色体の動原体は yellow遺伝子座の反対側の末端にあると決定した。 1926 S.S. Chetverikov ショウジョウバエの野生集団の遺伝学的解析を開始した。 1926 J.B. Sumner 水晶体から酵素(ウレアーゼ)を初めて取り出して結晶化し、一種のタンパク質であることを示した。 1926 A.H. Sturteveant ショウジョウバエで初めて逆位を発見した。 1926 R.E. Clausen, T.H. Goodspeed 植物(タバコ)で一染色体(monosomics)の分析を初めて記述した。 1927 K.M. Bauer 一卵性双生児の一人からもう一人へ皮膚を移植した場合、拒絶が起こらないことを報告した。 1927 J. Belling 非相同染色体間の相互転座は、減数分裂において環形成を引き起こすと発表した。 1927 J. Belling 押しつぶした染色体を酢酸カーミン染色する方法を導入した。 1927 B.O. Dodge アカパンカビの遺伝研究を開始した。 1927 H.J. Muller ショウジョウバエでX線による人為突然変異の誘発を報告した。 1928 L.J. Stadler トウモロコシにおける人為突然変異の誘発について報告し、線量と変異頻度の関係が直線的であることを示した。 1928 F. Griffith 肺炎双球菌(pneumococci)の型変換を発見した。このことが Avery, MacLeod, McCarty(1944)の研究の基盤となった。 1928 L.F. Randolph 植物細胞の正常染色体と過剰染色体を識別し、正常染色体を"A染色体"、過剰染色体を"B染色体"と呼んだ。 1928 E. Heitz 真正染色質(euchromatin)および異質染色質(heterochromatin)という言葉を作った。 1929 A. Fleming Penicillium 属のカビが、ある種の細菌の生育阻害物質を分泌することを報告。この抗菌性物質をペニシリンと名付けた。 1929 C.D. Darlington キアズマの機能は、相同染色体が減数分裂後期Iで互いに対極へ確実に移動できるように、減数分裂中期Iのあいだ合体状態を維持するためのものであると最初に提唱した。 1929 R.C. Tryon ラットの迷路学習能力の選抜に成功した。 1930 R.E. Cleland, A.F. Blakeslee 種々のマツヨイグサOenothera系統で見られる遺伝子群の奇妙な伝達パターンは、平衡致死と相互転座複合体システムによることを示した。 1930 K. Landsteiner 免疫学の研究でノーベル医学生理学賞を受賞した。 1930~32 R.A. Fisher, J.B.S. Haldane, S. Wright 集団遺伝学の数学的基礎についての一連の本や論文を出版した。 1931 C. Stern, H.B. Creighton, B. McClintock それぞれ独自に交差の細胞学的証拠を提出した。 1931 C.D. Darlington キアズマが染色体の切断なしに二価染色体の末端に移動することを示唆した。これはキアズマの末端化と言われるが、現在ではある生物種のみにみられる現象であることが判っている。 1931 B. McClintock トウモロコシにおいて染色体断片が逆向きになると、ヘテロ個体では太糸期(pacytene)に逆位対合がしばしば現れることを明らかにした。 1932 M. Knoll, E. Ruska 現代の電子顕微鏡の原型を考案した。 1933 T.S. Painter ショウジョウバエの唾腺染色体についての細胞遺伝学的研究を開始した。 1933 H. Hashimoto カイコガの性決定の、染色体による支配の問題を解決した。 1933 A.W.K. Tiselius 電気泳動によって電荷を持つ分子を分離する装置を考案した。 1933 B. McClintock 動原体を挟まない逆位をもつヘテロ個体で、逆位ループ内に一回だけの交換が起こると、無動原体と二動原体の染色分体を生ずることをトウモロコシで示した。 1933 T.H. Morgan 遺伝子理論を発展させた功績によりノーベル賞を受賞。 1934 M. Schlesinger ある種のバクテリオファージはDNAとタンパク質から成ると報告した。 1934 P.L'Heritier, G. Teissier 何世代も集団で飼育したキイロショウジョウバエの集団から有害な遺伝子が消失することを実験的に示した。 1934 H. Bauer ハエ幼虫の唾腺細胞の巨大染色体は多糸性染色体であると提唱した。 1935 J.B.S. Haldane ヒトの遺伝子について自然突然変異率を初めて計算した。 1935 E. Klenk テイ-サックス病患者の脳に蓄積する糖脂質をガングリオシドと同定した。 1935 F. Zernicke 位相差顕微鏡の原理を記載した。 1935 G.W. Beadle, B. Ephrussi, A. Kuhn, A. Butenandt ショウジョウバエとコナマダラメイガ(Ephestia)の眼の色素形成に関する遺伝生化学研究を完成した。 1935 W.M. Stanley タバコモザイクウイルスの単離と結晶化に成功した。 1935 C.B. Bridges キイロショウジョウバエの唾腺染色体地図を発表した。 1935 H. Spemann 胚誘導に関する研究によりノーベル賞を受賞。 1936 J.J. Bittner マウスの乳ガンは母乳を通じてウイルス様因子によって伝達されることを示唆した。 1936 A.H. Sturtevant, T. Dobzhansky 染色体系統樹の構築に逆位を利用する方法を初めて発表した。 1936 C. Stern ショウジョウバエの体細胞における乗換えを発見した。 1936 R. Scott-Moncrieff 植物色素の遺伝を総説。この研究の大部分はJohn Innes Horticultural Instituteの英国の遺伝学者らによって行われた。彼らはフラボノイドやカロテノイド色素の化学変化をひきおこす遺伝子置換個体を作出した。 1937 T. Dobzhansky 進化遺伝学の歴史的著作「遺伝および種の起源」 "Genetics and the Origin of Species"を出版した。 1937 A.F. Blakeslee, A.G. Avery コルヒチンによる倍数体作成を報告した。 1937 T.M. Sonneborn ゾウリムシにおける交配型を発見した。 1937 F.C. Bawden, N.W. Pirie タバコモザイクウイルスは少量(約5%)のRNAを含むタンパク質であると報告した。 1937 P.A. Gorer 実験用マウスで組織適合性抗原を初めて発見した。 1937 E. Chatton 細菌と藍藻を含む生物のグループを原核生物(prokaryotes)と名づけ、その他すべての生物を真核生物(eukaryotes)と名づけて、両者の間には根本的な違いがあることを述べた。 1938 B. McClintock 染色体の架橋-切断-融合-架橋サイクルについて記述した。 1938 T.M. Sonneborn ゾウリムシのキラー因子を発見した。 1938 M.M. Rhoades トウモロコシで突然変異誘発遺伝子Dtを記述した。 1939 E.L. Ellis, M. Delbruck 現代のファージ研究の端緒となる大腸菌ファージの増殖に関する研究を行った。彼らは、"一段成長実験法"を考案し、ファージが細菌に吸着したのち、潜伏期間中に細菌内で増殖し、最後にその子孫が一気に細菌から放出されることを示した。 1939 P. Levine, R.E. Stetson 父親由来の新しい血液型をもつ胎児によって母親が免疫されることを発見。この抗原は後に、新生児溶血性疾患の原因であるヒトRh式血液型によって同定された。 1939 A.W.K. Tiselius, E.A. Kabat 抗体は血清のγグロブリンに属することを示した。 1939 E. Knapp, H. Schreiber Sphaerocarpus donnelliに突然変異をひきおこす紫外線の効力は核酸の吸収スペクトルに一致することを示した。 1940 H.W. Florey, E. Chainら ペニシリンの抽出と精製に成功した。 1941 G.W. Beadle, E.L. Tatum アカパンカビの生化学的遺伝学に関する古典的研究を出版し、一遺伝子一酵素説を発表した。 1941 J. Branchet, T. Caspersson おのおの独立に、RNAは核小体と細胞質に局在し、細胞のRNA量はタンパク質合成能力と直接的に関係しているという結論に達した。 1941 A.H. Coons, H.J. Creech, R.N. Jones 免疫蛍光法を開発し、細胞上で抗体に反応する特殊な部位の存在を示した。 1941 K. Mather ポリジーン(polygene)という用語をつくり、いろいろな生物で見られるポリジーン形質について述べた。 1942 R. Schoenheimer "The Dynamic State of Body Constituents"を出版し、代謝の研究に同位体標識化合物の利用を記載。細胞内における有機化合物の代謝プールと代謝回転の概念を導入した。 1942 S.E. Luria, T.F. Anderson 細菌ウイルスの電子顕微鏡写真を初めて発表した。T2は多角形の頭部と尾を持っていた。 1942 G.D. Snell 移植の拒絶反応に関わる遺伝子を研究するため、高度に同系交配を繰返した系統(近交系)の開発を開始した。 1943 A. Claude リボソームを単離した。 1943 S.E. Luria, M. Delbruck 細菌遺伝学の研究を始め、細菌に自然突然変異が起こることを明らかにした。 1944 O.T. Avery, C.M. MacLeod, M. McCarty 肺炎双球菌の形質転換の原理を記述した。タンパク質ではなくDNAが遺伝する性質をもつ化学的物質であることを示唆した。 1945 R.R. Humphrey サンショウウオ(両生類)の雌はヘテロ配偶子をもつことを示した。 1945 M.J.D. White "Animal Cytology and Evolution"を出版。動物の進化と細胞遺伝学における進歩をまとめた初めての研究論文である。 1945 S.E. Luria 細菌ウイルスに突然変異が生じることを示した。 1945 E.B. Lewis ショウジョウバエにおいて、位置効果を記述した。 1945 A. Fleming, E.B. Chain, H.W. Florey ペニシリンの発見、精製およびその化学的性質の解明によりノーベル賞を受賞した。 1946 A. Claude 遠心分離パターンの違いを利用した細胞分画法を導入し、各分画を生化学的に調べる方法を確立した。 1946 M. Delbruck, W.T. Bailey, A.D. Hershey バクテリオファージの遺伝的組換えを証明した。 1946 J. Lederberg, E.L. Tatum 細菌の遺伝的組換えを証明した。 1946 J.A. Rapoport ショウジョウバエでホルムアルデヒドが突然変異誘発効果をもつと証明した。 1946 H.J. Muller, J.B. Sumner, W.M. Stanley ノーベル賞がH.J. Mullerの放射線遺伝学への貢献、J.B. Sumnerの酵素の結晶化、W.M. Stanleyのウイルスの純化と化学的性質に関する研究に対して授与された。 1948 A. Boivin, R. Vendrely, C. Vendrely 生物の各種細胞において半数体セットの染色体当たりのDNA量は一定であることを示した。 1948 H.K. Mitchell, J. Lein アカパンカビでトリプトファンシンセターゼが欠けている突然変異株を発見。この発見は一遺伝子一酵素仮説の最初の直接的証拠となった。 1948 P.A. Gorer, S. Lyman, G.D. Snell マウスの主要な組織適合性抗原の遺伝子座が第17染色体上にあることを発見し、H-2と命名した。 1948 H.J. Muller 遺伝子量補正(dosage compensation)という用語をつくった。 1948 J. Lederberg, N. Zinder; B.D. Davis 生化学的に欠損のある細菌の突然変異体を単離するために、それぞれ独立に、ペニシリン選択法を開発した。 1948 J. Clausen, D.D. Keck, W.M. Hiesey カリフォルニア州シエラネバダの垂直トランセクト(標本採取地)に生育している草本の生態型を分析し、その遺伝構造を記述した。 1948 G.D. Snell 組織適合性遺伝子(histocompatibility gene)という用語を導入し、移植の受け入れ、拒否の法則を組織的にまとめた。 1949 M.M. Green, K.C. Green ショウジョウバエのlozenge座は三つの遺伝子座に分割されることを示した。 1949 A. Kelner 酵母において紫外線障害が可視光により回復することを発見し、光回復と呼んだ。 1949 J.V. Neel 鎌形赤血球貧血症が常染色体性の劣性遺伝物質として単純なメンデル遺伝をすることを遺伝的に証拠立てた。 1950 B. McClintock トウモロコシの転移因子のAc系とDs系を発見した。 1950 E. Chargaff 核酸の構造研究の基礎をつくった。DNAについてアデニンとチミングループの数は常に同数であり、グアニンとシトシングループも同様であることを証明した。これらの発見はWatsonとCrickに、DNAはAとT、およびGとCの間が水素結合によって結ばれ二つのポリヌクレオチド鎖が向き合っていることを示唆した。 1950 A. Lwoff, A. Gutman Bacillus megatheriumの溶原株を研究し、細菌は非感染型のウイルスを隠し持っていること、それが新しいファージを形成する能力を宿主に与えることを示した。この非感染型のファージに"プロファージ"という語を与えた。LwoffはL. Siminovitch, N. Kjeldgaardらとともにプロファージが紫外線照射により感染型ウイルスを生ずることを示した。 1950 E. M. Lederberg 大腸菌の初めてのウイルス性エピソーム、λファージを発見した。 1950 H. Latta, J.F. Hartmann 超薄切片作成にガラスナイフの使用を導入した。 - 1951~1960
-
1951 G. Gey ヒトの不死化細胞系統Hela cellを樹立した。 1951 C. Stormont, R.D. Owen, M.R. Irwin ウシの血液型複対立遺伝子BおよびCについて血清学的な交差反応を記述した。 1951 Y. Chiba フォイルゲン染色による細胞化学的手法を用いて、葉緑体にDNAが存在することを証明した。 1951 N.H. Horowitz, U. Leupold 大腸菌とアカパンカビの遺伝子の何%が不可欠の機能を果たしているかを知るために、温度感受性突然変異体の大個体群をつくって調べたところ、それぞれ23%と46%であった。 1951 C. Petit キイロショウジョウバエの集団において、少数派遺伝子型の優位性を報告し、この現象が集団に頻度依存性選択と安定な多型性をもたらしうると指摘した。 1952 G. E. Palade ミトコンドリアの高解像度電子顕微鏡写真を初めて発表した。 1952 R. Dulbecco 細菌ウイルスの手法を動物ウイルスの研究に適用し、ニワトリ胚由来の細胞からなる単層培地上につくらせた西部ウマ脳脊髄炎ウイルスのプラーク(溶菌斑)を数えた。 1952 D. Mazia, K. Dan ウニの細胞分裂装置を分離し、その生化学的性質に関する研究を開始した。 1952 N.D. Zinder, J. Lederberg ネズミのチフス菌での形質導入を記述した。 1952 J.T. Patterson "Evolution in the Genus Drosophila"を著し、ハエの中で最もよく研究されているこの属における染色体進化につぃての情報を百科事典的にまとめた。 1952 A.H. Bradshaw イギリスの鉱山入り口付近に生えている草の集団の中には、高濃度の重金属(銅、鉛、亜鉛)に耐性のものが存在することを報告した。これは耐性遺伝子型が自然選択されたことを示している。 1952 R. Briggs, T.J. King カエルの除核卵に胞胚細胞から取った生きた核を移植すると、移植核は染色体の変化を起こすことを示した。 1952 W. Beermann 多糸性染色体のパフ形成パターンの時期と組織の特性を観察し、分化にともない遺伝子活性化がおこることの表れであることを示唆した。 1952 F. Sangerら インシュリンの完全なアミノ酸配列を解明し、インシュリンはジスルフィド架橋によって結合した二つのポリペプチド鎖を含むことを示した。 1952 A.D. Hershey, M. Chase ファージのDNAだけが宿主内にはいり、多くのタンパク質は細胞外に取り残されることを示した。 1952 D.M. Brown, A. Todd DNAとRNAは3'-5'で連結されたポリヌクレオチドであることを証明した。 1952 A.J.P. Martin, R.L.M. Synge クロマトグラフィーによる分離技術の発明に対し、ノーベル化学賞受賞。 1953 J.D. Watson, F.H.C. Crick プリンとピリミジン間の水素結合によって結び合わされた2重らせん鎖から成るDNAの模型を提唱した。 1953 C.C. Lindegren 酵母で遺伝子変換を発見した。 1953 A. Howard, S.R. Pelc 植物の細胞分裂周期中は、有糸分裂後にDNA合成を行わないG1期、つづいて核内DNA含量が倍化されるDNA合成期(S)、第二次成長相(G2)があり、その後有糸分裂が起こることを、オートラジオグラフィーによって証明した。 1953 W. Hayes 細菌の組換えにおいて極性のある行動を見つけた。大腸菌の高頻度組換え型(Hfr)H系統では、ある遺伝子はHfrからF-細菌へ速やかに移行するが、他の遺伝子はそうでないことを示した。 1953 R.E. Billingham, L. Brent, P.B. Medawar 免疫寛容を実験的に誘導できることを示した。 1953 Porter-Blum, Sjostrand ウルトラミクロトームを商業化した。 1953 J.B. Finean, F.S. Sjostrand, E. Steimann 葉緑体切片の電子顕微鏡写真を初めて発表した。 1953 K.R. Porter 小胞体(endoplasmic reticulum)を発見命名した。細胞質性で塩基性色素に染まるもとであると同定した。 1953 G.D. Snell マウスの主要組織適合性複合体(H-2)は複数の遺伝子座からなることを発見した。 1953 N. Visconti, M. Delbruck バクテリオファージの遺伝的組換えについての仮説を発表した。 1954 A. J. Dalton, M.D. Felix ゴルジ複合体の微細構造を初めて詳細に記述した。 1954 A.C. Allison 鎌形赤血球遺伝子に関してヘテロの個体が二日熱マラリア感染に対して強い事実を示し、ヒト集団の遺伝的平衡多型の最初の例となった。 1954 J. Dausset 何度も輸血を受けた患者の中には、他人の白血球表面に存在する抗原に対する抗体を産生するが、自分自身の細胞に対する抗体は産生しないことを観察した。これらの抗体は、初めてHLA抗原と定義され、ヒト組織適合性の定義が導かれた。 1954 E.S. Barghoorn, S.A. Tyler 20億年以上前の堆積岩に繊維状と球状の微生物の化石を発見した。この発見は、原生代に生命が存在したことを証明した。 1955 S. Benzer 大腸菌のT4-ファージのrII部位の微細構造を解明し、シストロン(cistron)、リコン(recon)、ミュートン(muton)などの用語をつくった。 1955 H. Frankel-Conrat, R.C. Williams 異なるウイルス由来の核酸とタンパク質から"雑種"タバコモザイクウイルスを再構成した。 1955 R.H. Pritchard Aspergillusのアデニン要求性突然変異株で一連の対立遺伝子の直線的配列を決める。同じ遺伝子の異なる対立遺伝子間に交差が起こり、異なる部位の突然変異として同定されることを示した。 1955 C. de Duve ら 加水分解酵素を含む細胞内小胞について述べ、リソソームと命名した。 1956 F. Jacob, E.L. Wollman 大腸菌の接合過程を実験的に阻害しうること、これにより供与菌の染色体の一部が受容菌に挿入されることを示した。 1956 S. Ochoa, A. Kornbergら 試験管内でのRNAおよびDNAの合成に成功した。 1956 J.H. Tjio, A. Levan ヒトの二倍体染色体数が46であることを示した。 1956 T.T. Puck, S.J. Cieciura, P.I. Marcus in vitro でヒトの細胞を増殖させることに成功した。 1956 A. Gierer, G. Schramm, H. Fraenkel-Conrat 化学的に純粋な核酸であるタバコモザイクウイルスRNAは感染力があり、遺伝的能力をもつことを、おのおの独立に証明した。 1957 J.H. Taylor, P.S. Woods, W.L. Hughes ソラマメの染色体複製が半保守的複製を行うことを、高分解能オートラジオグラフィーにより初めて明らかにした。 1957 V.M. Ingram 正常赤血球と鎌形赤血球は1個のアミノ酸のみが異なることを報告した。 1957 A. Todd ヌクレオシドとヌクレオチドの構造に関する研究により、ノーベル賞を受賞。 1958 F. Jacob, E.L. Wollman 大腸菌の単一の連関群が環状であることを立証し、種々のHfr系の異なる連関群が生ずる機構を示した。 1958 F.H.C. Crick タンパク質合成の際、アミノ酸がヌクレオチドを含むアダプター分子によって鋳型に運ばれること、アダプターがRNAの鋳型と相補的な部分であることを示唆し、tRNAの発見を予言した。 1958 P.C. Zamecnikら アミノ酸とtRNAの複合体の特性を明らかにした。 1958 H.G. Callan, H.G. MacGregor 両生類のランプブラシ染色体の染色分体が直線的に保たれているのはDNAによるものであることを証明した。 1958 M. Okamoto; R. Riley, V. Chapman それぞれ独自に、コムギの同祖染色体の対合を支配する遺伝子を発見した。 1958 F.C. Steward, M.O. Mapes, K. Mears Daucus carota(野生ニンジン)の根に由来する二倍体の単細胞から生殖細胞を持つ植物個体にまで育てることに成功し、多細胞生物の個々の細胞は完全な生物体の生成に必要なすべての要素をもつと結論した。 1958 G.W. Beadle, E.L. Tatum, J. Lederberg 遺伝学における貢献によりノーベル賞を受賞した。 1958 F. Sanger タンパク質化学における貢献によりノーベル賞を受賞した。 1959 J. Lejeune, M. Gautier, R. Turpin ダウン症候群が小形の末端動原体染色体の三染色体をもつ染色体異常であることを示した。 1959 C.E. Ford, K.W. Jones, P.E. Polani, J.C. de Almeida, J. Briggs ターナー症候群の女性はXO型であることを発見した。 1959 P.A. Jacobs, J.A. Strong クラインフェルター症候群の男性はXXY型であることを立証した。 1959 S.J. Singer フェリチンを免疫グロブリンに結合させ、電子顕微鏡下で容易に検出できる標識抗体分子をつくった。 1959 R.L. Sinsheimer 大腸菌のバクテリオファージφX174は一本鎖DNA分子をもつことを示した。 1959 E.M. Burnet Jerne の抗体産生に関する選択説を改良し、抗原はその抗原を認識する抗体を産生するように遺伝的にプログラムされた細胞のみの増殖を促すことを示唆した。 1959 K. McQuillen, R.B. Roberts, R.J. Britten リボソームがタンパク質合成の起こる場であることを大腸菌を使って証明した。 1959 E. Freese DNAの一対の塩基対の変化の結果として突然変異が起こることを提唱し、トランジション(塩基転位)およびトランスバージョン(塩基転換)の用語を作った。 1959 R.H. Whittaker 生物を五界(細菌、真核微生物、動物、植物、菌類)に分類することを提唱した。 1959 S. Ochoa, A. Kornberg in vitroにおける核酸合成に関する研究により、ノーベル賞を受賞した。 1960 P. Siekevitz, G.E. Palade 膜結合性のリボソームで合成される分泌タンパク質を記載した。 1960 P. Doty, J. Marmur, J. Eigner, C. Schildkraut DNA分子の相補的二重鎖が分離し、再結合しうることを立証した。 1960 G. Barski, S. Sorieul, F. Cornefert in vitroで哺乳動物の細胞の交雑が最初に成功したことを報告した。 1960 U. Clever, P. Karlson エクダイソンの注射によりユスリカChironomusの幼虫の多糸性染色体の特殊なパフ形成を実験的に誘導した。 1960 P.B. Medawar, F.M. Burnet 免疫学的寛容性に関する研究により、ノーベル賞を受賞。 - 1961~1970
-
1961 F. Jacob, J. Monod "「タンパク質合成の遺伝的制御機構」(Genetic reguratory mechanisms in the synthesis of proteins)"を発表し、オペロン説を展開した。 1961 F. Jacob, J. Monod リボソームはアミノ酸を配列させるための鋳型をもたないことを示唆。DNA(シストロン)からアミノ酸配列の情報をもつ寿命の限られたRNA分子の合成がおこり、このRNA分子がリボソームと一時的に会合し、タンパク質を合成する能力をリボソームに与える。このmRNAの存在は、その後S. Brenner, F. Jacob, M. MeselsonおよびF. Gros, W. Gilbert, H. Hiatt, C.G. Kirland, J.D. Watsonによって証明された。 1961 M.F. Lyon, L.B. Russell 哺乳類において一部の胚細胞とそれに由来する細胞群では一つのX染色体が不活化され、残りの細胞においてはもう一方のX染色体が不活化さること、したがって哺乳類の雌はX染色体に関してモザイクであるという証拠をそれぞれ独立に提示した。 1961 J. Josse, A.D. Kaiser, A. Kornberg DNAらせんの相補鎖は極性が異なっており、一方の鎖はもう一方の鎖と反対方向を向いていることを示した。 1961 V.M. Ingram 単一の始原ミオグロビン様血液タンパク質から、既知の4種類のヘモグロビン鎖への進化は、遺伝子重複と転座によって説明できることを示した。 1961 B.D. Hall, S. Spiegelman 塩基配列が相補的な一本鎖DNAとRNAが会合し雑種分子が形成されることを立証。この技術はmRNAの分離と、その特徴づけをおこなうための道を開いた。 1961 S.B. Weiss, T. Nakamoto RNAポリメラーゼを分離。 1961 G. von Ehrenstein, F. Lipmann ウサギの網状赤血球から抽出したmRNAとリボソームを、大腸菌由来のアミノ酸-tRNA複合体を組合わせた無細胞系に投入すると、ウサギヘモグロビンと同じタンパク質を合成することを発見。このことから遺伝暗号の共通性を結論づけた。 1961 F.H.C. Crick, L. Barnett, S. Brenner, R.J. Watts-Tobin 遺伝の言葉は三連文字(triplet)であることを示した。 1961 M.W. Nirenberg, J.H. Matthaei 鋳型RNAを加えるとアミノ酸からタンパク質が合成される、大腸菌の無細胞蛋白合成系を開発した。 1961 M. Meselson, J.J. Weigle λファージで、組換えが染色体の切断や再結合を伴うことを証明。 1961 H. Dintzis ヘモグロビン分子の合成方向は、アミノ末端からカルボキシル末端に進行することを示した。 1961 H. Moor, K. Muhlenthaler, H. Waldner, A. Frey-Wyssling フリーズフラクチャー法を開発し、それまでの切片作成法では不可能だった超微細細胞構造の観察が可能になった。 1961 U.Z. Littauer リボソームはたった2種類の高分子RNA、細菌においては16Sと23S、動物では18Sと28S RNA含んでいることを示した。 1961 C. Tokunaga キイロショウジョウバエのenglailed遺伝子は、ある発生のプレパターンを別のプレパターンへと変化させる遺伝子であることを示した。 1961 J.P. Waller, J.I. Harris 細菌のリボソームは多数の異なったタンパク質から構成されていることを発見。 1962 H. Ris, W. Plaut 電子顕微鏡観察により、葉緑体がDNAをもっていることを発見。 1962 E. Zuckerkandl, L. Pauling 真核生物の進化において、共通の祖先から異なるヘモグロビンが派生してくる時間を計算により推定した。 1962 F.M. Ritossa ショウジョウバエの一種、Drosophila buskiiで、唾線染色体の特定領域が熱ショックによりパフを形成することを報告。 1962 F.A.P. Miller, R.A. Good, N.L. Warnerら T細胞とB細胞の差を記載。 1962 R.R. Porter 酵素を使って免疫グロブリンを分割し、各分子は二つの抗原結合部位(Fab)と一つの抗原に結合しない結晶化できる部位(Fc)とからなることを示した。重鎖と軽鎖は1:1で存在することを示し、四本鎖モデルを提唱。 1962 D.A. Rodgers, G.E. McClearn マウスの系統間で、アルコールの好みに差のあることを発見。 1962 U. Henning, C. Yanofsky 三つ子の研究から、アミノ酸の置換が交差によって起り得ることを示した。 1962 J.B. Gurdon 腸細胞由来の核を除核卵細胞に注入し、正常な繁殖力をもつカエルを作成した。この実験により、体細胞の核と生殖細胞の核が質的には変わらないことが証明された。 1962 A. Gierer; J.R. Warner, A. Rich, C.E. Hall; T. Staehelin, H. Noll ポリリボソームが三つの研究室で独自に発見された。 1962 J.D. Watson, F.H.C. Crick, M.H.F. Wilkins DNAの構造に関する研究により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1962 M.F. Perutz, J.C. Kendrew ヘモグロビンとミオグロビンの三次元構造に関する研究により、ノーベル化学賞を受賞。 1963 B.B. Levine, A. Ojida, B. Benacerraf モルモットの免疫応答遺伝子についての初めての論文を発表。 1963 R. Rosset, R. Monier 5SRNAを発見。 1963 T. Okamoto, M. Takanami mRNAがリボソームの小サブユニットに結合することを示した。 1963 H. Noll, T. Staehelin, F.O. Wettstein タンパク質合成におけるテープ機構を明らかにした。 1963 J. Monod, S. Brenner レプリコン(複製単位)のモデルを発表。 1963 R. Sager, M.R. Ishida クラミドモナスより葉緑体DNAを単離。 1963 R.H. Epstein, R.S. Edgarら T4ファージの条件致死突然変異の利用を導入し、不可欠な遺伝子の機能研究の基礎を作った。 1963 J. Cairns 大腸菌の染色体が環状であり、半保存的複製は1本のY字型の複製分岐点から出発し、2個の娘染色体に分かれることをオートラジオグラフィーで証明。 1963 E. Margolish 広くさまざまな種のシトクロムcのアミノ酸配列を決定。特定の遺伝子産物について初めて系統樹を作った。 1963 E. Mayr 「動物の種と進化」"(Animal Species and Evolution)"を発表。この本は種形成に関する現代的な考えの集大成で、この分野の科学者に大きな影響を与えた。 1964 R.B. Setlow, W.L. Carrier, および R.P. Boyce, P. Howard-Flanders 別個に、細菌における除去修復の機構を発表。 1964 A.S. Sarabhai, A.O.W. Stretton, S. Brenner, A. Bolle 大腸菌のT4ウイルスの頭部をおおうタンパク質について、その遺伝子とタンパク質生産における共直線性を証明。 1964 M.S. Fox, M.K. Allen 肺炎双球菌の形質転換において受容菌のDNA中に供与DNAの一部が取込まれることを示した。 1964 J.G. Gorman, V.J. Freda, W. Pollack Rh-の母親は最初のの子供の出産直後にRh抗体を投与することによりRh+からの免疫感作を阻止できることを立証した。 1964 D.J.L. Luck, E. Reich アカパンカビからミトコンドリアDNAを単離。その結果、このDNAが古典的な半保存的機構により複製されることを証明した。(1966) 1964 R. Holliday 相同染色体DNA分子間の交差で起こる一連の切断、再結合を明確に説明するモデルを提出。 1964 J.W. Littlefield HAT培地でHGPRT-とTK-の細胞を使って、体細胞雑種を選択する方法を開発。 1964 D.D. Brown, J.B. Gurdon 核小体形成の欠損がホモとなったアフリカツメガエルのオタマジャクシでは、18Sと28SリボソームRNAの合成が起こらないことを示した。 1964 W.D. Hamilton 社会行動の遺伝子説を発表。 1964 W. Gilbert 合成されたばかりのタンパク質はtRNAと同様リボソームの大サブユニットに結合していることを発見。 1965 R.B. Marrifield, J. Stewart 合成樹脂性の固体支持体上でポリペプチド鎖を自動的に合成する方法を開発。自動化の原理は後に自動的に核酸を合成する機械にも採用された。 1965 D.D. Sabatini, Y. Tashiro, G.E. Palade リボソームの大サブユニットは小胞体に付着していることを示した。 1965 L. Hayflick 組織培養を用いて、ヒトの二倍体細胞の in vitro の寿命は、およそ50回分裂までで終了することを発見。 1965 R.W. Holleyら 酵母から分離したアラニンtRNAの完全なヌクレオチド配列を決定。 1965 N. Hilschmann, L. Craig 免疫グロブリン分子は、アミノ酸組成が不変のカルボキシル末端領域と可変のアミノ末端領域から成ることを報告する。この発見はアミノ酸組成が変わるタンパク質領域を遺伝子がどのようにコードしているかという問題を提起。 1965 P. Karlson, H. Hoffmeister, H. Hummel, P. Hocks, G. Spiteller エクダイソンの完全な分子構造を決定。 1965 S. Spiegelman, I. Haruna, I.B. Holland, G. Beaudreau, D.R. Mills 自己増殖する感染性RNA(大腸菌のQβバクテリオファージ)のin vitro合成に成功。 1965 S. Brenner, A.O.W. Stretton, S. Kaplan 成長するポリペプチドの末端を指示する暗号(コドン)はUAGとUAAであると推論。 1965 F.M. Ritossa, S. Spiegelman ショウジョウバエのリボソームRNAを生産する複数のシストロンがXとY染色体の核小体形成部位に存在することを証明。 1965 H. Harris, J.F. Watkins ヒトとマウスの体細胞をセンダイウイルスを用いて融合し、人工的に種間の雑種細胞をつくった。 1965 A.J. Clark, A.D. Margulies 組換え不能の大腸菌の多くの突然変異は、紫外線照射に対しても異常に感受性が高いことを報告。この発見は、損傷を受けたDNAの修復と組換えの両方に類似した酵素系が機能することを示唆した。 1965 F. Sanger, G.G. Brownlee, B.G. Barrell 部分的に加水分解したRNAを用いてフィンガープリンティング法(分解産物の電気泳動パターンを指紋として利用する方法)を報告。 1965 F. Jacob, J. Monod, A. Lwoff 細菌遺伝学に対する貢献により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1966 B. Weiss, C.C. Richardson DNAリガーゼを分離。 1966 N.M.K. Nass ミトコンドリアのDNAは環状二重鎖分子であることを報告。 1966 F.H.C. Crick 遺伝暗号の縮退の一般的パターンを、ゆらぎによって説明。 1966 J. Adams, M. Cappecchi リボソーム上でのポリペチド鎖形成の起点としてN-ホルミルメチオニル-tRNAが機能することを示した。 1966 W. Gilbert, B. Muller-Hill 大腸菌のラクトースリプレッサーはタンパク質であることを示した。 1966 M. Ptashne λファージリプレッサーはタンパク質で、DNAに直接結合することを示した。 1966 M. Waring, R.J. Britten 脊椎動物のDNAは多くの反復ヌクレオチド配列を含むことを示した。 1966 R.S. Edgar, W.B. Wood T4バクテリオファージの形態形成について遺伝的支配を解析。 1966 V.A. McKusick ヒトの1500の遺伝病を収録するカタログ「ヒトのメンデル遺伝」 "(Mendelian Inheritance in Man)"を出版。 1966 E. Terzaghi, Y. Okada, G. Streisinger, J. Emrich, M. Inoue, A. Tsugita T4ファージリゾチームの遺伝暗号は一定の点から始まり3塩基ずつ読まれ、翻訳されることを確かめた。 1966 R.C. Lewontin, J.L. Hubby Drosophila pseudoobscuraの自然集団における、タンパク質の変異を調べるために電気泳動法を使用。個体のゲノムは平均して全遺伝子座の8~15%がヘテロの状態にあることを示した。同じ方法でH. Harrisはヒト集団には酵素タンパクの多型現象が存在することを示した。 1966 P. Rous 発がん性ウイルスに関する研究により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1967 H.G. Khorana ら 遺伝暗号を解読するため、既知のジヌクレオチドおよびトリヌクレオチド配列の繰返しをもつポリヌクレオチドを使用。 1967 K. Taylor, Z. Hradecna, W. Szybalski mRNAが両方のDNA鎖から生じることを示した。 1967 B. Mintz 異形質マウスを用い、毛皮の色を決めるメラニン細胞は、胚形成初期の34個の細胞で確立することを立証。 1967 J.B. Gurdon 異なった発生段階のカエルの卵に体細胞の核を移植すると、移植核のRNAおよびDNA合成は宿主細胞の合成の特徴に変化することを示した。 1967 C.B. Jacobson, R.H. Barter 羊水穿刺を行い、胎児の細胞から遺伝病を診断できることを報告。 1967 C.C.F. Blakeら リゾチームの三次元構造を2Aの解像度で発表。酵素分子がどのようにして基質と合うように形づくられているかを初めて示唆した。 1967 M. Goulian, A. Kornberg, R.L. Sinsheimer 生物学的に活性をもつDNAのin vitro 合成に成功。大腸菌のDNAポリメラーゼの鋳型としてφX174由来のssDNAを使用。 1967 M.L. Birnstiel アフリカツメガエルから純粋のrDNAを分離。 1967 T.O. Diener, W.B. Raymer ジャガイモのやせいも病がウイロイドによって起きることを示した。 1967 M.C. Weiss, H. Green HAT選択法を用いて、チミジンキナーゼ遺伝子の染色体上の位置を決めた。ヒトの遺伝子の位置を決めるのに、初めて体細胞遺伝学を利用した。 1967 V.M. Sarich, A.C. Wilson チンパンジー、ゴリラ、ヒトのアルブミンタンパク質の免疫学的性質を比較し、アフリカのサルとヒトは四百万年から六百万年前に共通の祖先をもっていたと結論づけた。 1968 R. Okazaki, T. Okazaki 4 colleagues 新しく合成されたDNAは多数の断片を含んでいることを示した。これらの断片は、短鎖DNAとして不連続に合成された後、互いに連結されるとした。 1968 W. Gilbert, D.D. Dressler DNA複製のローリングサークルモデルを提案。 1968 J. Morgan, D.P. McKenzie, X. Le Pinchon 大陸移動を説明するためプレートテクトニクスの概念を展開。 1968 J.G. Gall; D.D. Brown, I.B. Dawid 両生類の卵発生時にリボソームRNA遺伝子の特異的合成がおこることを報告。 1968 M. Kimura 分子進化の中立遺伝説を提唱。 1968 H.O. Smith, K.W. Wilcox, T.J. Kelly 特異性のある制限酵素(Hind II)を初めて単離、性質を調べた。 1968 D.Y. Thomas, D. Wilkie 酵母ミトコンドリア遺伝子に組換えがおこることを明らかにした。 1968 J.A. Huberman, A.D. Riggs 哺乳類の染色体は連続して配置され、おのおの独立して複製する長さ30μmの単位より成ることを示した。 1968 S. Wright 四巻からなる「集団進化と集団遺伝学」"(Evolution and the Genetics of Populations)"の第一巻を刊行。最終巻は10年後に完結。 1968 O. Hess, G. Meyer 各種のショウジョウバエについてY染色体の構造上の変化に関する広範な研究を発表。Y染色体が精子の発生時期の特異段階を支配する遺伝子を含むことを証明。 1968 S.A. Henderson, R.G. Edwards マウスの母親の年齢増加に伴い、卵細胞当たりのキアズマ数が減少し、一価染色体数が増加することを立証。もし同様のことがヒトでおこるならば、母体年齢の進行につれて異数染色体をもつ子孫の出現が増加することが予測される。 1968 J.E. Cleaver DNAの修復複製が、色素性乾皮症の患者では不完全なことを示した。 1968 R.J. Britten, D.E. Kohne コット曲線を用いて、異なる種のゲノムの反復DNA配列と非反復DNA配列の量比を決定できることを示した。 1968 R.W. Davis, N. Davidson ヘテロ二本鎖DNA分子を実験的につくり出し、バクテリオファージλの欠失変異を視覚的にとらえた。 1968 R.W. Holley, H.G. Khorana, M.W. Nirenberg 遺伝暗号の解読とタンパク質合成における役割の発見により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1969 J.G. Gall, M.L. Pardue / H. John, M.L. Birnstiel, K.W. Jones 特定のヌクレオチド配列の細胞内局在を明らかにするin situハイブリッド形成法を開発した。 1969 B.C. Westmoreland, W. Szybalski, H. Ris 電顕的手法を用いて物理的にλファージの遺伝子の位置を決める方法を開発した。この方法を用いて、一方の親の-鎖と他方の親の+鎖をアニールして得られたヘテロ二重鎖DNA分子の写真をとり、欠失、挿入、置換、あるいは逆位の位置を決定できることを示した。 1969 R. Burgess, A.A. Travers, J.J. Dunn, E.K. Bautz RNAポリメラーゼσ因子を分離同定。 1969 O.L. Miller, B.R. Beatty RNA分子が転写されている過程の遺伝子の電子顕微鏡写真を発表。 1969 J.R. Beckwith ら 大腸菌から純粋のlacオペロンDNAを分離したと報告。 1969 G.M. Edelman ら ヒトのγ-G1抗グロブリンの完全なアミノ酸配列を発表。 1969 Y. Hotta, S. Benzer; W.L. / Pak, J. Grossfield 各グループ独立に、ショウジョウバエの神経系突然変異体を作成し、生理学的な特性を明らかにした。 1969 C. Boon, F. Ruddle ヒトとマウス雑種体細胞から特定のヒト染色体が失われることと、特定の表現形質が失われることの相互関係を報告。特定遺伝子がヒトの染色体上のどこにあるかを調べることを可能にした。 1969 R.I. Huebner, G.I. Todaro がん遺伝子説を発表。 1969 H.A. Lubs ヒト染色体上の脆弱部位について述べ、この部位が精神薄弱の男性に存在することを示した。その後の研究によりこの遺伝子座(Xq27)はX染色体に連鎖する精神薄弱に共通して見られることが示された。 1969 M. Delbruck, S. Luria, A. Hershey ウイルス遺伝学に対する貢献により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1970 B.M. Alberts, L. Frey T4ファージの遺伝子32のタンパク質を単離し、このタンパク質が一本鎖DNAに協同的に結合することを証明。32タンパク質がDNA分子を巻きもどし、DNA複製が開始できるようにしていると示唆した。 1970 H.G. Khorana ら 酵母のアラニンtRNA遺伝子の全長の合成を報告。 1970 M. Mandel, A. Higa 大腸菌にDNAを導入する方法を開発。細胞を塩化カルシウム処理すると、核酸が細胞膜を透過して細胞内に取り込まれることを示した。 1970 T. Caspersson, L. Zech, C. Johansson キナクリンを用い、ヒトの染色体を染めると、特定の蛍光を発するバンドパターンが形成されることを示した。 1970 R. Sager, Z. Ramanis 非メンデル性遺伝子の最初の遺伝地図を出版。Chlamydomonasの葉緑体の染色体上に位置する8個の遺伝子グループの地図を報告。 1970 R.T. Johnson, P.N. Rao 分裂中の細胞と間期の細胞をin vitroで融合すると、間期細胞は分裂細胞側にシフトし、染色体凝縮が誘導された。 1970 M. Smos, R.B. Inman バクテリオファージλの染色体複製研究にDNA変性マッピング法を使用。複製が特定の複製開始点から始まり、二つの複製フォークが反対方向に進んで環状分子になることを示した。 1970 H.O. Smith, K.W. Wilcox ある種の制限酵素は、その末端に一本鎖部分を突出させることを発見。 - 1971~1980
-
1971 M.L. O'Riordan, J.A. Robinson, K.E. Buckton, H.J. Evans 塩酸キナクリンで染色するとヒトの22対の常染色体を顕微鏡下で識別しうることを報告。彼らはフィラデルフィア染色体が第22染色体の異常であることを示した。 1971 Y. Hotta, H. Stern ユリにおいて減数分裂前期に合成されるDNAの特徴を明らかにした。接合糸期(zygotene)における合成は、それに先立つS期に複製されなかった一部のDNAの遅延合成であること、太糸期(pachytene)のDNA合成は修復複製の特徴をもつことなどを明らかにした。 1971 S.H. Howell, H. Stern 小胞子(microsporocyte)に存在するエンドヌクレアーゼの濃度は、交差(crossing over)が起きると考えられている太糸期(pachytene)の初期に最高になることを示した。 1971 C.R. Merril, M.R. Geier, J.C. Petricciani ガラクトース血症患者の培養繊維芽細胞にガラクトースオペロンをもつλファージを感染させると、その細胞が失っていたトランスフェラーゼが合成されるようになり、長期間の生存が可能になることを報告。 1971 D.T. Suzuki, T. Grigliatti, R. Williamson ショウジョウバエの温度感受性平衡突然変異系統を分離。 1971 J.E. Manning, O.C. Richards ユーグレナの葉緑体抽出物中に環状DNAの存在を検出。 1971 J.E. Darnell, L. Philipson, R. Wall, M. Adesnik mRNA前駆体の転写後修飾中に、ポリアデニル酸断片が付加され、このポリA部分がmRNAを安定化することを示した。 1971 K. Dana, D. Nathansl 制限酵素を使ってSV40の環状DNAを断片化し、DNA断片の物理的配列を組み立てた。 1972 P. Lobban, A.D. Kaiser ベクターDNA分子と外来DNA断片の末端にターミナルトランスフェラーゼを用いて相補的なホモポリマーを付加すると、相補末端をもつDNA分子を結合できるという一般的方法を開発した。 1972 G.H. Pigott, N.G. Carr シアノバクテリアのリボソームRNAはユーグレナ(Euglena gracilis)の葉緑体DNAと相同性を示し、葉緑体が内在性共生生物であったシアノバクテリアの子孫であることを示した。 1972 S.J. Singer, G.L. Nicholson 細胞膜構造の流動モザイクモデルを提唱。 1972 Y. Suzuki, D.D. Brown カイコガの絹フィブロインのmRNAを単離、精製した。 1972 Y. Suzuki, L.P. Gage, D.D. Brown フィブロイン遺伝子を解析。 1972 R. Silber, V.G. Malathi, J. Hurwitz RNAリガーゼを発見。 1972 D.A. Jackson, R.H. Symons, P. Berg SV40DNAを大腸菌λファージDNAに結合し、異種生物由来のDNAのin vitroでの結合に初めて成功した。 1972 J. Mendlewicz, J.L. Fleiss, R.R. Fieve そううつ病が、X染色体短腕上にある優性遺伝子として遺伝することを示した。 1972 P.S. Carlson, H.H. Smith, R.D. Dearing 擬似有性法により植物の種間雑種の作出に成功した。 1972 J. Hedgpeth, H.M. Goodman, H.W. Boyer 特定のエンドヌクレアーゼによって認識される大腸菌ファージλDNAのヌクレオチド配列を決定。 1972 S.N. Cohen, A.C.Y. Chang, L. Hsu 大腸菌が環状プラスミドDNAを取込むこと、形質転換体はプラスミド上の薬剤耐性遺伝子を利用して、細菌集団の中から選択できることを明らかにした。 1972 J. Mertz, R.W. Davis 制限酵素 EcoRⅠによるDNAの切断は、付着末端を生じることを示した。 1972 D.E. Kohne, J.A. Chisson, B.H. Hoyer DNA-DNAハイブリッド形成のデータを用いて霊長類の進化を研究し、ヒトに最も近い生物がチンパンジーであると結論づけた。 1972 G.M. Edelman, R.R. Porter 抗体の化学構造に関する研究により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1973 D.R. Mills, F.R. Kramer, S. Spiegelman 複製RNA分子の218塩基の配列を明らかにした。この分子はMDV-1、(QβファージのRNA)から由来した変異分子で、短い期間で"細胞外進化"をとげたものであることを示した。 1973 S.H. Kim, G.J. Quigley, F.L. Suddath, A. McPherson, D. Sneden, J.J. Kim, J. Weinzierl, A. Rich 酵母のフェニルアラニンtRNAの三次元構造を決定。 1973 P. Debergh, C. Nitsch 小胞子(microsporocyte, すなわち花粉前駆細胞)から直接半数体トマトの培養に成功。 1973 P.J. Ford, E.M. Southern アフリカツメガエル卵母細胞で、体細胞では見られない、別種の5SRNA遺伝子群が転写されることを示した。 1973 W. Fiers, W.M. Jou, G. Haegerman, M. Ysebaert F因子特異的ファージMS2のコートタンパク質をコードしている遺伝子の塩基配列を初めて決定。 1973 B.E. Roberts, B.M. Patterson 小麦麦芽の無細胞系を調製し、人為的なmRNAを用いた in vitroのタンパク質の翻訳に成功した。 1973 A. Garcia-Bellido, P. Ripoll, G. Morata ショウジョウバエの翅の成虫原基で、発生過程に従った区画化が起こることを報告。 1973 S.N. Cohen, A.C.Y. Chang, H.W. Boyer, R.B. Helling 異なるプラスミド由来の制限酵素断片をin vitroで結合させ、初めて生物学的に機能をもった細菌の雑種プラスミドをつくった。 1974 J. Shine, L. Dalgarno 大腸菌16S rRNAの3'末端に、大腸菌ファージmRNAのリボソーム結合部位と相補的な、短い塩基配列のあることを発見。16S rRNAのこの領域と塩基対を形成することで、mRNA上のタンパク質合成の停止と開始が調節されていることを示した。 1974 I. Zaenen, N. van Larebeke, H. Teuchy, M. van Montagu, J. Schell クラウンゴール(根こぶ)をつくる細菌の腫瘍誘導プラスミドを発見。 1974 K.M. Murray, N.E. Murray λファージDNA上に制限酵素認識部位を導入することにより、外来DNAの制限酵素断片を組込めるようにした。λファージが、クローニングベクターとなった。 1974 A.Tissieres, H.K. Mitchell, U.M. Tracy 熱ショックにより、ショウジョウバエに6種の新しいタンパク質が合成されることを報告。 1974 B. Dujon, P.P. Slonimski, L. Weill 酵母ミトコンドリア(mt)ゲノムの組換えと分離のモデルを提唱。このモデルによると、mtDNA分子は、二倍体細胞においては、複数コピー存在し、片親由来のmtDNAが、もう一方の親由来のmtDNAと無作為に、また接合環のどの時期においても対合し、交換しうることにより、組換え体を生じるとした。 1974 R.D. Kornberg 染色質(クロマチン)は、200塩基対のDNAと、H2A、H2B、H3、H4とよばれるヒストン各二分子から成る単位の繰返し構造から構成されていると提唱。この構造は、後に、ヌクレオソームとよばれるものである。この構造体は、M. Noll, A.L. Olinsにより単離され、D.E. Olinsにより、核由来の染色質中にヌクレオソーム構造を示す電子顕微鏡写真が発表された。 1974 B. Ames 変異原性をもつ発がん性化合物を迅速にスクリーニングする方法を開発。 1974 S. Brenner 線虫の一種Caenorhabditis elegansの突然変異の誘発、ミュータントの単離、マッピングの方法を報告。 1974 R.W. Hedges, A.E. Jacob プラスミド間に、ペニシリン耐性を伝達することのできる動く遺伝子を発見。 1974 G.L. Stebbins 「顕花植物:種の進化」"(Flowing Plants, Evolution Above the Species Level)"を発表。 1974 C.A. Hutchison, J.E. Newbold, S.S. Potter, M.H. Edgell ウマとロバの雑種を調べ、ミトコンドリアDNAが母性遺伝することを示した。 1974 A. Claude, C. de Duve, G. Palade 細胞生物学に対する貢献によりノーベル賞受賞。 1975 G. Kohler, C. Milstein マウス細胞の体細胞間雑種形成により、モノクローナル抗体を産生する"多種類のハイブリドーマ"細胞系列が作成可能なことを実験的に示した。 1975 分子生物学者が世界中からカリフォルニア州アシロマに集まり、組換えDNA実験を行うにあたっての研究指針を定めた歴史的規定書を作成した。 1975 NIH組換えDNA委員会は、組換えDNA研究に伴う潜在的危険性を排除することを目的とした指針を発表。 1975 M. Grunstein, D.S. Hogness 特定のDNA断片や遺伝子を含むクローン化DNAを単離する方法として、コロニーハイブリッド形成法を開発した。 1975 D. Pribnow バクテリオファージT7の二つのプロモーターの塩基配列を決定。既知の他のプロモーターと比較することにより、プロモーターの構造と機能のモデルを作成。 1975 E.M. Southern DNA断片を、アガロースゲルからニトロセルロースフィルターへ移す方法を報告。フィルターは、放射性同位体で標識したRNAとハイブリダイズさせ、オートラジオグラフィーによって結合DNAの検出を可能とした。 1975 W.D. Benton, R.W. Davis λgtファージの組換え体プラークの迅速かつ直接検出法を報告。ファージDNAをニトロセルロースフィルターに写し、標識した相補配列をもつ核酸とハイブリッド形成をおこない、特定のDNAを検出した。 1975 F. Sanger, A.R. Coulson DNAポリメラーゼを用いて、 DNAに結合したプライマーからDNA合成を行わせて塩基配列を決定する方法を開発。 1975 G. Morata, P.A. Lawrence ショウジョウバエの engrailed 変異では、後部の翅の区画の細胞が、前部の細胞と混じりあうことを示した。よって、この遺伝子の正常な機能は、発生中の翅の区画間の境を決定することであることがわかった。 1975 R. Dulbecco, H. Temin, D. Baltimore 腫瘍ウイルスに関する研究でノーベル賞受賞。 1976 H.R.B. Pelham, R.J. Jackson ウサギ網状赤血球抽出液を用いて、mRNAに依存した簡便で効率のよいin vitro翻訳系を報告した。 1976 R.V. Dippell ゾウリムシのキネトソームは、DNAのかわりにRNAを含み、その増殖には、RNA合成が伴うことを示した。 1976 N. Hozumi, S. Tonegawa 免疫グロブリン鎖の可変領域と定常領域をコードしているDNA領域は、マウスの染色体上では互いに遠く離れているが、マウスプラズマ細胞では、隣接していることを示した。Bリンパ球の分化の過程で、体細胞組換えが起こり、定常領域と可変領域に対応する遺伝子が、互いに近接すると結論づけた。 1976 W.Y. Kan, M.S. Golbus, A.M. Dozy DNA組換え技術を臨床レベルで初めて用いた。DNA分子のハイブリッド形成技術を利用して鎌状赤血球貧血症の胎児診断法を開発した。 1976 M.F. Gellertら DNAジャイレースが、開環状、閉環状DNA分子を負のらせん構造をもつ分子に変換する酵素であることを発見した。 1976 B.G. Burrell, G.M. Air, C.A. Hutchison ファージφX174では、異なる遺伝子領域が部分的に重なって存在することを報告した。 1976 遺伝子工学の会社が初めて設立され、Genentechと命名された。 1976 A. Efstratiadis, F.C. Kafatos, A. Maxam, T. Maniatis 真核生物の遺伝子をin vitro で初めて酵素的に合成した。ウサギのヘモグロビンのα鎖とβ鎖に相当するDNA配列を含む二本鎖DNAを作った。 1976 J.T. Finch, A. Klug 染色質(クロマチン)を断片化した時電子顕微鏡で観察できる300Aの糸は、DNA-ヌクレオソームの繊維がソレノイド状にたたみ込まれたものであると提唱した。 1977 A. Knoll, E.S. Barghoorn 34億年前の岩石中に、ミクロ化石を発見。当時、細胞が分裂中だったと推察できる。このことから、地球上での生命の起源は、始生代前期までさかのぼった。 1977 C. Jacq, J.R. Miller, G.G. Brownlee アフリカツメガエル卵母細胞の5SDNAの集合領域の中に"偽遺伝子"の存在を報告。 1977 J.C. Alwine, D.J. Kemp, G.R. Stark DBMペーパーを調製し、電気泳動により分離したRNAのバンドをDBMペーパーに移す方法を報告。標識されたDNAプローブを用いたハイブリッド形成とそのオートラジオグラフィーによって、特定のRNA分子を検出できた。この方法は、Southern(1975)によって述べられたDNAをフィルターに移しとる方法と対比して、"ノーザンブロッティング"と呼ばれるようになった。 1977 F. Sanger ら φX174のDNAゲノムの全塩基配列を決定。 1977 M. Leffak, R. Grainger, H. Weintraub DNA複製時には"古い"ヒストン八量体はそのまま残り、"新しい"八量体は複製時に合成されたタンパク質のみで形成されることを示した。 1977 W. Gilbert 哺乳動物の有用なタンパク質(インスリン、インターフェロン)を細菌で合成させた。 1977 A.M. Maxam, W. Gilbert DNA塩基配列決定の"化学的方法"を公表。 1977 R.W. Old, H.G. Callan, K.W. Gross サンショウウオのランプブラシ染色体上で転写されたヒストンmRNAの局在を、in situ ハイブリッド形成法により示した。 1977 D.S. Hogness, D.M. Glover, R.L. White キイロショウジョウバエの28S rRNA中に、介在配列が存在している場合があることを報告。その後、タンパク質をコードしている遺伝子についても、ウサギのβグロビン遺伝子(A. Jeffreys, R.A. Flavell)やニワトリのオボアルブミン遺伝子(R. Breathnach, J.L. Mandel, P. Chambon)で、タンパク質をコードしない介在配列の存在が報告された。 1977 J. Weber, W. Jelinek, J.E. Darnell アデノウイルス-2のゲノム中で離れて存在するDNA断片から、さまざまな組み合わせの選択的スプライシングが起こることによって、多種類のmRNAが合成されることを報告。 1977 J.F. Pardon ら ヌクレオソーム中では、ヒストン八量体に結合しているDNA鎖は粒子の外側に位置することを中性子コントラスト適合法により示した。 1977 J. Sulston, H.R. Horvitz 線虫C.elegans の後胚期の細胞系譜を完成させた。 1977 J. Collins, B. Holm DNAの大きな断片をクローニングするためのコスミドベクターを開発。 1977 R.S. Yalow ラジオイムノアッセイの開発によりノーベル賞を受賞。 1978 R.M. Schwartz, M.O. Dayhoff 進化上、広範囲にわたる原核生物、真核生物、ミトコンドリア、葉緑体に由来するさまざまな、タンパク質と核酸の配列データを比較。コンピュータ解析によって進化の系統樹を作り、真核生物の祖先型が、ミトコンドリアや葉緑体と共生生活に入った年代を、それぞれ二億年および一億年前と決定した。 1978 W. Gilbert イントロンおよびエクソンという用語を提唱。 1978 T. Maniatis, R.C. Hardison, E. Lacy, J. Lauer, C. O'Connell, D. Quon, G.K. Sim, A. Efstratiadis 遺伝子の単離法を開発。真核生物DNAの遺伝子ライブラリーのつくり方と特異的核酸プローブでのハイブリッド形成によってライブラリーから目的の配列をもつクローンをスクリーニングする方法。 1978 D.J. Finnegan, G.M. Rubin, M.W. Young, D.S. Hogness ショウジョウバエのゲノム上に散在している反復DNAの詳細な解析を行う。これらの解析により、真核生物における突然変異のおこり方、転移、形質転換、交雑発生異常、レトロウイルス等についてのが理解が始まった。 1978 E.B. Lewis bithorax 複合遺伝子座の各遺伝子は、ショウジョウバエの体節化に関連した機能をもち、いくつかの祖先遺伝子の重複と特殊化を経て進化してきたと結論づけた。 1978 V.B. Reddy ら SV40の全塩基配列を発表。塩基配列とウイルスの既知の遺伝子およびmRNAを対応づけた。 1978 Y.W. Kan, A.M. Dozy 鎌形赤血球による貧血症の胎児診断用の連鎖マーカーとして、ゲノムDNAの制限酵素断片の多型を利用することの有用性を報告。 1978 C.A. Hutchisonら DNA分子の特定の場所に特定の変異を導入することが可能であることを証明。 1978 E.H. Blackburn, J.G. Gall テトラヒメナ(Tetrahymena pyriformis)のテロメアは短いDNA配列(AACCCC、他方鎖がTTGGGG)が30~70回直列に繰返しているものであると報告。 1978 W. Arber, H.O. Smith, D. Nathans 制限酵素を用いた遺伝の仕組みの研究技術開発に対し、ノーベル賞を受賞。 1979 J.G. Sutcliffe クローニングベクタープラスミドpBR322の4362塩基の全配列を決定。 1979 J.C. Avise, R.A. Lansman, R.O. Shade 自然集団中のミトコンドリアDNAの塩基配列の近縁関係を、制限酵素切断したDNAを比べることにより解析することに成功。 1979 国立衛生研究所(NIH)は、ウイルスDNAを研究するため、組換えDNAの指針を緩和した。 1979 B.G. Barrell, A.T. Bankier, J. Drouin ヒトミトコンドリアの遺伝暗号には、普遍暗号にあてはまらない特有な暗号があると報告。 1979 E.F. Fritsch, R.M. Lawn, T. Maniatis ヒトグロビン遺伝子の染色体上での配置と構造を、組換えDNA技術を利用して決定。 1979 J.R. Cameron, E.Y. Loh, R.W. Davis 酵母の転移因子を発見。 1979 D.V. Goeddel 9 colleagues 組換えDNA技術を用い、ヒト成長ホルモン(HGH)遺伝子を合成。合成遺伝子は、大腸菌内でラクトースプロモーターの制御下で発現し、HGHの性質をもつポリペプチドを産生した。 1979 M.R. Lerner, J.A. Steitz snRNP(small nuclear ribonucleoprotein)の発見を報告。 1980 L. Olsson, H.S. Kaplan 実験室培養下で純品抗体を産生するヒトハイブリドーマを初めてつくった。 1980 米国最高裁判所は、遺伝学的に修飾された微生物の特許を法制化。General Electric companyは、A. Chakrabartyにより遺伝子工学的に改変され、石油の油膜を分解できるようになった微生物の特許を取得。 1980 J.W. Gorden, G.A. Scangos, D.J. Plotkin, J.A. Barbosa, F.H. Ruddle 受精卵にクローン化した遺伝子を直接注入することで、初めてトランスジェニックマウスの作成に成功。 1980 M.R. Capecchi マイクロピペットを用いて、哺乳類培養細胞にDNAを直接顕微注入(マイクロインジェクション)し、効率よく形質転換を起こさせる方法を報告。 1980 H. Gronemeyer, O. Pongs キイロショウジョウバエ唾腺染色体上で、エクダイソンによって誘導形成されるパフ部分に、β-エクダイソンが直接結合することを示した。 1980 C. Nusslein-Volhard, E. Wieschaus キイロショウジョウバエの体節化に関わる突然変異を単離同定した。 1980 A.R. Templeton 始祖原則(founder primipal)に基づく種形成に、新たな理論体系を与えた。 1980 G.D. Snell, J. Dausset, B. Benacerraf 免疫遺伝学に対する貢献により、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1980 P. Berg, W. Gilbert, F. Sanger DNAの実験的操作に対する貢献により、ノーベル化学賞を受賞。 - 1981~1989
-
1981 P.C. Parker, H.E. Varmus, J.M. Bishop ラウス肉腫ウイルスの腫瘍化を起こす性質は、v-src遺伝子によってコードされていることを示した。多くのの脊椎動物の細胞は、相同遺伝子c-srcをもち、ウイルス遺伝子との差は、v-srcでは、翻訳領域がひと続きであるのに対し、c-srcでは、7個のエクソンが6個のイントロンにより分断されていることである。 1981 L. Margulis "Symbiosis in Cell Evolution"を出版。ミトコンドリア、葉緑体、キネトソームのようなオルガネラは、現在の真核生物の祖先に共生体として組み込まれた原核生物が進化したものだとする説の根拠をまとめた。 1981 R. Lande ポリジーンによる形質の性選択に基づく種形成の新しいモデルを提唱。 1981 J.D. Kemp, T.H. Hall クラウンゴールを形成する細菌、Agrobacterium tumefaciensのプラスミドを介して、種子貯蔵タンパク質(ファセオリン)遺伝子を、豆(bean)からヒマワリ(sunflower)に移して"sunbean"をつくった。 1981 T.R. Cech, A.J. Zaug, P.J. Grabowski テトラヒメナ(Tetrahymena thermophila)において、自己スプライシングをおこなうrRNAを発見した。これは、タンパク質以外の高分子が、生物触媒としての機能を発揮することを初めて示したものである。 1981 W.F. Anderson, D.H. Ohlendorf, Y. Takeda, B.F. Matthews croタンパク質の三次元立体構造を2.8Aの解像度で決定。 1981 G. Hombrecher, N.J. Brewin, A.W.B. Johnson 根粒細菌が根粒をつくり、空気中の窒素を固定する能力は、プラスミド上の遺伝子によるものであることを示した。 1981 P.R. Langer, A.A. Waldrop, D.C. Ward ビオチン化DNAを合成し、これを相補鎖DNAと分子雑種を形成させ、ストレプトアビジンを介した呈色反応系で検出できることを示した。 1981 S. Anderson, B.G. Barrell, F. Sanger ら ヒトミトコンドリアゲノムの遺伝子構造と全塩基配列を決定した。 1981 M.E. Harper, G.F. Saunders 改良in situハイブリッド形成法を用いて、単一コピーの遺伝子をヒト染色体上にマップできることを示した。 1981 J. Banerji, S. Rusconi, S. Schaffner "エンハンサー配列"とよばれるSV40の特定の塩基配列とつなぐと、β-グロビン遺伝子の転写活性が数百倍上がることを示した。 1981 M. Chalfie, J. Sulston 線虫(Caenorhabditis elegans)の触覚非感受性変異の中から、6個の感覚神経細胞の特定の組合わせに影響する5個の遺伝子を同定した。 1981 K.E. Steinbeck, L. McIntosh, L. Bogorad, C.J. Arntzen Amaranthus hybridusという草のトリアジン系除草剤に対する抵抗性が、除草剤結合タンパク質をコードしている葉緑体の遺伝子によって制御されていることを示した。抵抗性株は、トリアジンが結合できないような変異をもつ遺伝子産物を産生する。 1982 Eli Lilly International Corporationが組換えDNA技術を用いて製造した医薬品(ヒトインシュリン)を初めて販売。 1982 P.M. Bingham, M.G. Kidwell, G.M. Rubin ショウジョウバエのP系統は、ゲノム中に30~50コピーの転移性P因子を含み、これが交雑発生不全の原因となる。A. C. SpradlingとRubinは、P因子をクローン化し、ショウジョウバエの胚に顕微注入した。このP因子は、生殖細胞の染色体に組込まれ、ショウジョウバエ生殖細胞へ任意のDNAを導入するベクターとして使用できる可能性を示した。 1982 L.S.B. Goldstein, R.W. Hardy, D.L. Lindsley ショウジョウバエY染色体上に、精子の構造を形づくるタンパク質の遺伝子が存在することを示した。 1982 A. Klug ウイルス粒子、tRNA、ヌクレオソームなど生物学的に重要な意味をもつ物質の結晶構造の解析に対し、ノーベル賞を受賞。 1983 E.A. Miele, D.R. Mills, F.R.K. Kramer Qβという小さな細菌ウイルスのRNAゲノムに、外来性のデカアデニル酸を挿入し、組換えRNAの作成に初めて成功した。 1983 H.J. Jacobsら ウニに乱交雑DNAの存在を報告。 1983 I.S. Greenwald, P.W. Sternberg, H.R. Horvitz 線虫C. elegansのlin-12変異は、発生を制御する遺伝子の変異であることを示した。 1983 ショウジョウバエ体節決定遺伝子の分子遺伝学的解析の初めての論文が発表された。M.P. Scott et al.によるAntenapedia遺伝子群と W. Benzeret al.によるbithorax遺伝子群の解析である。 1983 G.N. Godson, J. Ellis, P. Svec, D.H. Schlessinger, V. Nussenzweig Plasmodium knowlesiのcricumsporozoiteタンパク質の遺伝子をクローニング。このタンパク質は、ヒト免疫系によって、誤認識されるエピトープの繰返し構造をもつことを示した。 1983 C. Gnerrier-Takada, K. Gardiner, T. Marsh, N. Pace, S. Altman リボヌクレアーゼPの触媒活性は、そのRNA部分にのみ存在することを報告。 1983 M. Kimura, T. Ohta ヒト、酵母、細菌の5SrRNAの塩基配列の比較研究により、真核生物と原核生物の分岐は、18億年前と推定した。 1983 M. Rassoulzadeganら ポリオーマウイルスより、ラット胚由来の培養繊維芽細胞を増殖させ続けるDNAをクローン化した。ウイルス遺伝子から作られるタンパク質のアミノ末端部分のみが、この機能をもっていることを示した。 1983 R.F. Doolittleら SV40のがん遺伝子、v-sisは、血小板由来増殖因子(PDGF)の遺伝子に由来することを示した。 1983 B. McClintock 転移性遺伝因子の発見によりノーベル賞を受賞。 1984 D.C. Schwartz, C.R. Cantor パルスフィールド電気泳動法により、2000kbの大きさをもつDNA分子が分離可能であることを示した。これにより、通常のアガロースゲル電気泳動法の限界(50kb以下)を越えることができた。 1984 J. Gitschier ら ヒト抗血友病因子の遺伝子をクローニングした。 1984 W. McGinnis, C.P. Hart, W.J. Gehring, F.H. Ruddle ショウジョウバエのホメオティック遺伝子で、初めて同定されたホメオボックス配列が、マウスにも存在することを示した。塩基配列の類似性の高さは動物の発生におけるこのDNA断片の基本的な機能の重要性を示すものである。 1984 R.F. Pohlman, N.V. Federoff, J. Messing トウモロコシの転移性因子Activatorの塩基配列を決定。 1984 M. Davis, T. Mak T細胞受容体の遺伝子を同定しクローニングした。 1984 R.B. Jerne, G. Kohler, C. Milstein 免疫学に対する貢献によりノーベル医学生理学賞を受賞。 1985 R.B. Merrifield 自動ペプチド合成の成功により、ノーベル化学賞受賞。 1985 J.R. Miller, A.D. McLachlan, A. Klug アフリカツメガエル卵母細胞より、ジンクフィンガータンパク質を単離し、性質を調べた。このタンパク質は、5SRNA遺伝子に結合して、その転写を調節するものであった。 1985 S. Horowitz, M. A. Gorowsky, F. Yamao 遺伝暗号は普遍であるという考えが修正された。"普遍暗号"では終止コドンに相当するものが、ある種の線虫や細菌では、アミノ酸をコードしている。たとえば、Stylonychia lemnaeではUAAおよびUGAがグルタミンを(S. Horowitz, M.A. Gorowsky)Myoplasma capricolumではUGAがトリプトファンを(F. Yamao)コードしている。 1985 C.M. Newman, J.E. Cohen, C. Kipnis 化石に残された記録にみられる種形成の断続的平衡シフトパターンを説明するために、特別なメカニズムは必要ではないことを数学的に証明した。 1985 C.W. Greider, E.H. Blackburn テトラヒメナ(Tetrahymena pyrifomis)からテロメラーゼを単離。 1985 O. Smithies ら ヒト組織培養細胞でβグロブリン遺伝子座位に相同のDNA配列を挿入することに成功。相同組換えによる遺伝子置換に道を拓いた。 1985 A.J. Jeffries, V. Wilson, S.L. Thien DNAフィンガープリント法を開発し、法医学における応用の可能性を示した。 1985 R.K. Saiki, K.B. Mullisら 特定の遺伝子断片をin vitroで酵素を使って増幅させるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を報告。 1985 H.L. Carson 性的選択が、ショウジョウバエのハワイ種の形態および行動の進化の基盤となっていることを示した。 1985 M.S. Brown, J.L. Goldstein 低密度リポタンパク質受容体経路の解明と、この経路の遺伝的欠陥により家族性高脂血症がおこることを示したことに対しノーベル賞を受賞。 1986 M.-C. Shih, G. Lazar, H.M. Goodman 高等植物の葉緑体のグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼをコードしている核内遺伝子は、葉緑体となった共生生物の遺伝子が核に移行したものであることを示した。 1986 A. Tomlinson, D. F. Ready ショウジョウバエの突然変異sevenlessを発見。この遺伝子は,個眼を形成する特定の細胞の発生運命を制御している。 1986 A.G. Amit, A. Mariuzza, S.E.V. Phillips, R.J. Poljak 抗原-抗体複合体の三次元構造を2.8Aの解像度で解析した。 1986 F. Costantini, K. Chada, J. Magram クローン化された正常なβグロブリン遺伝子を鎌状赤血球症の異常βグロブリン遺伝子の機能と置換できることをマウスで示した。正常遺伝子は、鎌状赤血球症の受精卵に注入すると、正常βグロブリンを産生する赤血球をもつマウスが生まれる。これらのトランスジェニックマウスは、子孫にこの能力を伝達できた。 1986 J. Nathans, D. Thomas, D.S. Hogness ヒトの視覚色素遺伝子を単離し、性質を同定した。 1986 M. Nolly ら paired遺伝子は、複数の保存されたドメインを持ち、相同のドメインを持つ他の遺伝子とネットワークを作って、ショウジョウバエの初期発生を制御していることを示唆した。 1986 E. Ruska 電子顕微鏡の設計に対してノーベル賞を受賞。 1987 M.R. Kuehnら ヒト遺伝子研究のため、取扱いやすい実験用マウスに導入した。HPRT変異遺伝子を、レトロウイルスのベクターに乗せて、マウスの培養胚性細胞に挿入し、マウス胚に移植。これらのマウスからヒト遺伝子をもつマウスの系統が得られた。 1987 C. Nusslein-Volhard, H.G. Frohnhofer, R. Lehmann 母性効果を示す遺伝子群を、ショウジョウバエで見出し、胚発生で軸決定にかかわっていることを示した。 1987 E.P. Hoffman, R.H. Brown, L.M. Kunkel 筋ジストロフィー遺伝子座の産物であるジストロフィンタンパク質を単離。 1987 D.C. Wiley ら ヒトのクラスⅠ組織適合性抗原HLA-A2の三次元構造を決定。 1987 D.C. Pageら 精巣の分化にかかわる因子をコードしているヒトY染色体の断片をクローン化。この断片は、1.2kbのORFを含み、ジンクフィンガータンパク質をコードしていた。 1987 R.L. Cann, M. Stoneking, A.C. Wilson 地理的に離れたところに住むヒト集団で、ミトコンドリアDNAについて塩基配列の相違を比較した。構築された系統樹によると、すべてのミトコンドリアDNAは、アフリカ女性を共通祖先としていることを示した。 1987 S. Tonegawa 抗体の多様性をつくり出す遺伝的機構を明らかにしたことに対してノーベル賞医学生理学賞を受賞。 1988 W. Driever, C. Nusslein-Volhard bicoid遺伝子の産物は、胚の前後軸に沿って対数的濃度勾配を作って分布しているを示した。 1988 P.M. Macdonald, G. Struhl 母性極性遺伝子bicoidのmRNAのトレーラー部分に625bpの特定の配列が存在し、この配列がmRNA自身をショウジョウバエ卵母細胞の頭部に局在化させるのに必要であることを示した。 1988 W.H. Landschulz, P.F. Johnson, S.L. McKnight ロイシンジッパーを発見。DNA結合部位として機能していると提唱。 1988 V. Sorsa ショウジョウバエ多糸染色体についての百科事典的記述と、唾腺染色体の電子顕微鏡地図とをまとめ全二巻の書物を出版。 1988 遺伝的に改変した動物に対して、初めて米国特許が認められる。ハーバード大学は、P. Lederと T. Stewartが作成した実験的発癌マウスに対する特許を取得。 1988 S.L. Mansour, K.R. Thomas, M.R. Capecchi 実験用マウスを用いた遺伝子ターゲッティングの一般的方法を報告。 1989 W. Driever, C. Nusslein-Volhard ショウジョウバエのbicoid遺伝子産物が、体節化遺伝子hunchbackのスイッチングに関与することを示した。 1989 B. Zink, R. Paro 抗体染色法により、Polycomb(Pc)遺伝子産物が、ショウジョウバエ多糸染色体の限られた部位に結合し、結合部位の中には、Antennapedia複合遺伝子座やbithorax複合遺伝子座が含まれることを示した。これらの遺伝子座はPcによって抑制されることがわかっている。 1989 L.-C. Tsuiら 嚢胞性繊維症の遺伝子を同定し、たんぱく質のアミノ酸配列を推定。もっともよく見られる変異遺伝子座の特徴を示した。 1989 J.M. Bishop, H.E. Varmus レトロウイルスのもつがん遺伝子の研究に対し、ノーベル医学生理学賞を受賞。 1989 T.R. Cech, S. Altman ある種のRNAが酵素活性をもつことを明らかにしたことに対しノーベル化学賞受賞。 - 1990~1996
-
1990 W.F. Anderson ヒトで初めて遺伝子治療に成功したことを報告。アデノシンデアミナーゼ欠損症の4才の女の子からリンパ球を取り出し、欠損酵素を持つレトロウイルスのベクターと共に培養した。形質転換細胞を患者に再注入したところ、細胞が増殖し病気が治癒した。 1990 M.K. Bhattcharyya, 4colleagues メンデルが遺伝実験で使ったひとつの変異体(しわ豆)は、豆の胚の中の澱粉含量をコントロールしている遺伝子にトランスポゾンが挿入されたミュータントであることを示した。 1990 S.J. Baker, 4colleagues 野生型p53遺伝子の導入がヒトのガン細胞の増殖を抑えることを示した。 1990 R. Bookstein, 4colleagues 変異したレチノブラストーマ(RB)遺伝子を持つヒトの前立腺ガン細胞は、RB遺伝子の野生型の導入によって、その増殖が押さえられることを示した。 1990 B. Blum, N. Bakalara, L. Simpson RNAエディティングはガイドRNAによって行われると提案。 1990 B.G. Herrmann, 4colleagues マウスで中胚葉の形成に必要なT遺伝子をクローン化。 1990 J. Milicki, K. Scgughart, W. McGinnis マウスのホメオボックス遺伝子をショウジョウバエの胚に移入し、この遺伝子がアンテナペディアのようなホメオティックな形質転換を引き起こす事を観察した。このことは、数百万年の間、単独で進化してきた遺伝子が交換可能な機能を持つことを示した。 1990 D. Malkin, 10colleagues Li-Fraumeni症状の欠陥はp53遺伝子の変異にあることを明らかにした。さらに、ヒトのすべてのガンの50%にp53変異があることを明らかにした。 1990 F. Barany リガーセ連鎖反応を発明。これにより特定のDNA配列にある突然変異をすばやく確認できるようになった。 1990 X. Fang, 3colleagues Plasmodium vivaxのDuffyレセプターをコードする遺伝子をクローン化した。 1991 D.A. Wheeler, J.C. Hall, 5colleagues クローニングされたDrosophila simulans(オナジショウジョウバエ)のper遺伝子を、不活性のperアレルを持つD. melanogaster(キイロショウジョウバエ)ゲノムに導入することに成功。形質転換された雄はsimulansの求愛ソングを歌った(simulansの羽音で歌った)。 1991 J.W. Ijdo, 4colleagues 2本の棍棒状染色体が結合して1本のV形染色体に代わった時の、テロメアとテロメアの融合部位を示すヒト染色体2のq13バンドに特異的なヌクレオチド配列を確認。この融合により染色体ペアーの数はチンパンジー、ゴリラやオランウータンの24から、ヒトでは23に減少した。 1991 A.J.M.H. Verkerk, 20colleagues FMR-1遺伝子を人間のX染色体の脆弱部で確認し、脆弱性X染色体関連精神遅滞にかかった患者の場合、CGG3塩基の反復配列が長くなっていることを証明した。 1991 D.R. Knighton, 6colleagues 全ての真核生物の蛋白リン酸化酵素に共通している触媒中心部位の三次元構造を決定した。 1992 G.G. Oliver, 146colleagues ヨーロッパの35の研究所のコンソーシアムの147人は、真核生物の染色体で初めての完全な塩基配列を発表した。酵母、Saccharomyces cerevisaeの染色体IIIは第3番目に小さく、長さは315,357bpで182のORFs持っていた。この中の117(80%)は、以前にシークエンスされた酵母遺伝子には相同性を示さなかった。 1992 R.M. Story, I.T. Weber, T.A. Steitz 大腸菌の遺伝子組み換えとDNA修復で中心的役割を果たすRecA蛋白の3次元構造を決定。 1992 E.G. Krebs, E.H. Fischer 蛋白質リン酸化酵素の発見と、シグナル伝達におけるそれらの役割を明らかにしたことに対しノーベル賞を受賞。 1993 M.C. Mullins, C. Nusslein-Volhard ゼブラフィッシュの数百におよぶ発生異常ミュータントを作成し、脊椎動物発生の遺伝的コントロールの研究に新しい時代を拓いた。 1993 A. Chauddhuri , 5colleagues Duffy血清因子の遺伝子をクローニングした。この蛋白は338アミノ酸からなり、赤血球の細胞膜に結合し、マラリア原虫の侵入に必須である。 1993 G. Maroni 真核生物で初めて、遺伝子の比較形態アトラスを出版した。この中で90のショウジョウバエ遺伝子がイラスト化された。 1993 C. Pisano, S. Bonocorsi, M. Gatti Y染色体にない遺伝子がコードする蛋白が、ショウジョウバエの精子のY染色体上の特異的な巨大ランプブラシループに結合することを報告。これは精子のしっぽを構成する蛋白質の一つで、精母細胞のYループはこれら外因性の蛋白質を結合することで、アクソネマに精母細胞を集合させる役割を果たす。 1993 L. Pereira, 6colleagues FBNI遺伝子の構造を決定した。この遺伝子はフィブリリン(fibrillin)をコードしており、これに突然変異がおこるとマルファン症候群を引きおこす。 1993 M.E. MacDonalds, 56colleagues of Huntingtons Disease Research Group ハンチントン舞踏症の遺伝をクローン化してシークエンスし、患者には不安定なトリヌクレオチドの繰り返しが増加していることを示した。 1993 J.A. Thabcharani, 6 colleagues 嚢胞性繊維症(cystic fibrosis)のイオンチャンネルとして働いている膜貫通伝導調節蛋白質は多種の陰イオンを伝導できることを示した。CFTR蛋白質の膜貫通ドメインの6番目のヘリックス部にある+チャージしたアミノ酸はハロゲン輸送に必要であることを証明した。 1993 R.J. Roberts, P.A. Sharp split gene(イントロンによる遺伝子の分割)を発見しノーベル医学賞を受賞。 1993 M. Smith, K.B. Mullis それぞれ部位特異的突然変異の誘発技術およびPCRの発見に対し、ノーベル化学賞を受賞。 1994 B. Dujon, 107 colleagues of 29laboratories of EU consortium イーストのXI染色体上の666,448の塩基配列を報告した。この染色体はすべてのゲノムの約5%を占め、この染色体の331のORFのうち7つはイントロンを含んでて43はオーバーラップ遺伝子であった。 1994 N. Morral, 30colleagues of EU loboratories ヨーロッパのいろいろな地方の嚢胞性繊維症の家族からとられた遺伝子のΔF508変異と連関しているマイクロサテライトDNAを調べた結果、変異はすくなくとも50,000年前に南西ヨーロッパで生じたという結論を出した。 1994 S.E. Gabriel, 4colleagues 腸内の細胞にある嚢胞性繊維症(CF)伝導調節蛋白質の量とコレラトキシンによる体液の分泌量の間にポジテイブな相互関係を見つけた。嚢胞性繊維症遺伝子へテロ個体はコレラに対して抵抗力があり、この選択の優位性が、ヒト集団の中にCF遺伝子を高頻度に存在させている。 1994 W.C. Orr, R.S. Sohal カタラーゼとスーパーオキサイドジスムダーゼ遺伝子をショウジョウバエに導入した系統をつくった。これらのハエではの加齢過程の遅延が認められた。 1994 M.E.Gurney, T.Siddique, 12colleagues スーパーオクサイドジスムターゼの変異したヒト遺伝子を持つマウスを作成。これらのマウスは突然変異酵素を合成し、筋萎縮性の側索硬化症にかかったヒトのように麻痺した。 1994 N.W. Kim, 9colleagues テロメラーゼ活性の鋭敏な検定法を開発した。その検定を用いてヒトの分化した体細胞では、テロメラーゼ活性は失われているが、癌細胞や生殖細胞(卵巣や精巣)ではテロメラーゼ活性があることを明らかにした。 1994 Y. Chikashige, 6colleagues 分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの減数分裂前期の染色体運動を蛍光顕微鏡で観察し、テロメアは一点に集合して染色体の運動をリードするように動くことを明らかにした。 1994 T. Tully, 8colleagues ショウジョウバエの記憶の形成をコントロールする遺伝子を単離した。 1994 Y. Zhang, 5colleagues マウスのobese遺伝子をクローン化し構造を決定した。産物は体の脂肪をコントロールする分泌蛋白質であった。 1994 R.J. Bollog, 5colleagues マウスのT遺伝子はDNAに結合するモチーフ(Tボックス)をコードすることを示した。Tboxはまた両生類、魚、昆虫の発生においても不可欠な役割を果たしている。 1994 S. Whitham, 5colleagues トウモロコシのAc因子を用いてタバコの病害抵抗性遺伝子をタグし、クローン化した。 1994 Y. Miki, 44colleagues その遺伝子が突然変異することにより、胸部および卵巣がガンに感受性となるヒト発癌抑制遺伝子BRAC1を同定した。 1994 M. Rosdbell, A.G. Gillman G蛋白質を発見し細胞シグナル変換での役割を明らかにしたことに対し、ノーベル賞を受けた。 1995 G. Halder, P. Calleaerts, W.J. Gehring Drosophila melanogaster(ショウジョウバエ)のeyelessという遺伝子は、目の形態発生のマスターコントロール遺伝子であることを証明した。 1995 C. Wilson, J.W. Szotsak 自己アルキル化反応を触媒できるRNAを生成させ、試験管内の進化実験を報告した。 1995 J. Hughes, 7colleagues PKD1遺伝子の産物であるポリシステインの4,320アミノ酸のシークエンスを発表した。この遺伝子における変異はヒトで多嚢胞腎臓症の原因となる。 1995 R. Wooster, 40colleagues BRAC2遺伝子を同定した。 1995 R.D. Fleischmann, J.C. Venter, 38colleagues インフルエンザ(Haemophilus influenzae)菌の全塩基配列を完成。 1995 C.M. Fraser, J.C. Venter, 27colleagues 引き続きマイコプラズマ(Mycoplasma genitalium)の全塩基配列を発表した。 1995 R. Sherrington, P.H.St George-Hyslop, 31colleagues 染色体14にあって、家族性アルツハイマー病(AD)の早期発生の80%についての原因である遺伝子を分離して解析した。2ヶ月後G.D.ShellenbergはこのAD遺伝子産物と非常に良く似た蛋白質をコードするもうひとつの遺伝子の位置を確認した。これは、染色体1にあり、この遺伝子の変異は残りの20%の早発生家族性ADの原因と成っていた。 1995 S. Labeit, B. Kolmer 心臓ティティンcDNAをクローンニングした。ティティンは知られている蛋白質の中で最も大きくて、平均蛋白質サイズの50倍もの大きさがある。 1995 K. Zhao, C.M. Hart, U.K. Laemmli ショウジョウバエ(Drosophila)からインシュレーターDNAに結合する蛋白質を精製し、免疫染色を利用してこの蛋白質が多糸性染色体の数百のインターバンドやパフとの境界面に結合することを証明した。 1995 A.W. Kerrebrock, 3colleagues mei-S332遺伝子をクローンニングし、この遺伝子がコードする蛋白質が、減数分裂の第一分裂の間、姉妹染色分体を接着していることを示した。mei-S332蛋白質をGFPと融合し、この蛋白がショウジョウバエ精母細胞の染色体のセントロメア部分に局在することを示した。 1995 S. Horai, 4colleagues 個々の3人の女性(日本人、ヨーロッパ人、アフリカ人)と4つの猿人種属の雌のミトコンドリアゲノムの全体のシークエンスを比較した。この分析は、全ての人間のmtDNA分子は約140,000年前アフリカに生きていたある女性から由来したと言うことを示した。 1995 L.A. Tartaglia, 18colleagues レプチンレセプターをコードするO-BRという遺伝子を確認し、この膜結合性蛋白質のmRNAは視床下部で転写されることを示した。 1995 M. Moritz, Y. Zheng, B. Alberts, 5colleagues 中心体においてガンマチューブリンを含んでいる環状複合体を確認し、この錯体はミクロチューブル核生成部位として機能していることを示した。 1995 H. Lin, A.C. Spradling ショウジョウバエ幹細胞のうち、卵原細胞と嚢胞原基で見いだされた細胞小器官(オルガネラ)をスペクトロゾーム(spectrosome)と名付けた。これはfusomeの前駆体と考えられる。 1995 E.B. Lewis, E. Wieshaus, C. Nusslein-Volhard ショウジョウバエ胚発生と形態形成における、細胞分化の制御の遺伝的メカニズムを解析したことに対して、ノーベル医学賞を受賞。 1996 G.D. Penny, 4collegues ジーンターゲッティングにより、x染色体の不活性化には、x染色体上にあるXist遺伝子の転写が必要なことを証明。 1996 C. Bult, 39colleagues 古生物のMethancoccus Jannaschiiゲノムのほとんどの遺伝子は、他の生物と共通でないことを示した。 1996 J. Dubnau, G. Struhl/R. Rivera-Pomar, 4colleagues ホメオボックス蛋白は、特定のmRNAの標的配列に結合して、翻訳をコントロールすることを示した。