色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション |
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2.2 赤緑色盲の人にはどのように色が見えるのか まず、最も頻度の高い赤緑色盲の色覚について考えてみよう。本節では、色盲としては程度が重い 2 色型色覚 (強度の第1色盲と第2色盲) の色覚を中心に説明する。2色型色覚は、赤緑色盲全体の 1/3 〜 1/4 を占める*3。数の上では多数派である異常3色型色覚 (軽度の第1色盲と第2色盲、いわゆる色弱)では、色の見え方はここで説明する 2色型色覚と正常3色型色覚の中間になる。また、ここで示すシミュレーション画像もすべて2色型色覚のものであり、異常3色型色覚ではこれらとオリジナル画像 (正常3色型色覚) との中間になる。赤か緑のオプシンの機能を完全に欠いている 2色型色覚では色の見え方は比較的個人差が少ないが、異常3色型色覚では第1回 1.5節に述べたようにオプシン遺伝子のエクソンの組み合わせによって様々な種類があり、色の見え方は非常に多様で個人差が大きい。人によっては 2色型色覚に近い場合もあれば、色盲でない人とほとんど変わらない場合もある* 4。 A:赤〜緑と青〜紫にかけての色の弁別が困難だが、緑〜青にかけての弁別には支障がない それぞれの錐体細胞は、視物質の吸収極大波長付近の光に対しては強く、それから離れた波長の光に対しては弱く興奮する。大多数の哺乳類がそうであるように、青に吸収極大波長を持つ短波長側錐体細胞と緑もしくは黄緑に吸収極大波長を持つ長波長側錐体細胞の2 種類があれば、2つの細胞の出力の差を検出することで広い波長範囲の色を弁別することができる*5(図2B)。これが 2色型色覚である。強度の第 もしくは第2色盲では赤錐体 (黄緑に吸収極大) か緑錐体 (緑に吸収極大) の機能が失われるので、残る青錐体と組み合わせた 2色型色覚となる。スペクトルのシミュレーション (図2B と図3) を見ると、第1色盲でも第2色盲でも緑から青の範囲の色は、色盲でない人と同様に微妙な色が弁別できることがわかる。しかし 2種類の錐体細胞の出力が同じような比になる波長は、図2Bに示すようにどちらの錐体細胞においても吸収極大波長の長波長側と短波長側に 1つずつ存在しうる。これらの波長の光は錐体からの出力が同じであるため、脳には同じような色として認識されてしまう。スペクトルのシミュレーションで、長波長側視物質の吸収極大波長である 531nm (緑)〜 558nm (黄緑) 付近を中心として左右の色が対称的に見えてしまっているのは、この理由からである。また短波長側視物質の吸収極大波長 419nm を挟んだ青から紫にかけての範囲でも、左右の色が対称的に見えてしまっている。 3色型色覚の人では、さらにもう1種類の錐体細胞からの出力を利用することで、このような 2色型色覚では混同してしまう色も弁別できる。青錐体と赤錐体の出力の比が同じになるような波長の組み合わせでも、緑の錐体細胞の出力は異なった値になる(図2A)。3色型色覚の人はこのようにして赤から紫にかけての広い範囲の波長の光を混同なく弁別することができるようになっているのに対し、赤緑色盲の人はスペクトルの両端部で、色の弁別能が落ちるわけである。 このような色覚特性を持つ赤緑色盲では、実際にどのような色が弁別しにくくなるのだろうか? まず前述したように、スペクトルの上に並ぶ色では赤〜緑と青〜紫で、明度が類似した色の見分けが困難になる (図2, 3)。長波長側の錐体の吸収極大波長である 緑〜黄緑 をおおよそ中心として左右対称に、「黄色と黄緑」「赤と緑」などが見分けにくくなる。また短波長側では、青と紫の弁別がつかない。 人間はスペクトルの上に並ばない多くの色も認識できる。このような色では、ある色と、それに緑みや黄色みや赤みを足した色とが弁別しにくくなる。「緑と茶色」「濃い赤とこげ茶色」「明るい茶色とオレンジと黄緑色」などである (図4)。「水色とピンク」「灰色と淡い水色や薄緑」「芝生の色、夕陽の色、ライオンの色」など彩度 (色飽和度) の低い色では、さらに弁別が難しくなる (図4)。衣類や装飾、ファンシーなデザインによく用いられるパステルカラーやアースカラーは彩度の低い色であり、薄暗い場所では特に色の弁別が困難なことが多い。白や水色のシャツと薄いピンク色のシャツの区別に困難を感じたり、薄暗い飲食店のトイレの男女別が水色とピンク色の同じ形の標識で示されていて、この 2色が弁別できなかったりすることがある*6。強度色盲の著者は、そっと中を覗き小便器の存在を確認してから入った経験がある。端から見れば実に怪しい行為である。 我々の周りには、赤と緑を弁別できることを前提とした表示や掲示が多く見受けられる。先日利用したスキー場のゲレンデ案内板は、初心者コースが緑色の実線、上級者コースが赤色の実線で描かれていた。色盲の人にはどれが初心者用かよくわからない。案内板を頼りに麓のゲレンデからは見えない山頂付近のコースへゴンドラで昇ったところ、そこは急斜面の上級者コースで、初心者にはとても滑って降りられる状態ではなかった。スキーを外して歩いて降りることで難を逃れはしたが、ゲレンデの混雑状態や天候によっては非常に危険なことである。 図5A は電源アダプターのパイロットランプである。充電中はオレンジの発光ダイオード (LED) が点灯し、充電が完了すると緑に切り替わる。また図5B は PCR のパイロットランプで、緑がヒーターの加熱オフ、赤がオンである。これらは1つのランプで 2色の表示を行うので、色の弁別ができなければ 2つの状態を区別することができない。しかしシミュレーションでは第1第2色盲とも、ランプの色を弁別できないことがわかる。同じような赤と緑や、オレンジと緑の LED は、家庭用や実験用の電気製品で無数に使われている。これらは色盲の人にはメッセージがほとんど伝わらない。エラーであることに気が付かずに機械を破損したり、なぜ作動しないのかわからず不要な修理を頼むことになったりして、不必要な出費や時間の無駄となる。 駅で電車の行き先や発車時間を表示する電光掲示板などでも、緑と赤の 2色 LED が多く用いられている。この色の差も、赤緑色盲の人にはほとんど認識できない。単色の表示に見えるだけである。 一方で、同じ赤と緑の光の組合せでも交通信号機は、赤緑色盲の人でもきちんと赤と緑 (青信号) を区別できるようになっている。電気製品の緑の
LED に比較して、交通信号機では青錐体を刺激する、より短波長側の (寒色系の) 緑を使用することが国際照明委員会で厳密に定められ、日本でも「JIS
安全色光使用通則」によって規定されている。赤と緑の LED 表示も、緑にこのような短波長側の緑色を使えば色盲の人にも理解しやすくなるはずである。もっとも、赤と緑でなく青色
LED や白色 LED を赤や緑と組み合わせるほうが、違いをわかりやすくするためにははるかに効果的である。 C:直接比較できない色の見分けが難しい 色が左右に 2つ並んでいて同時に見比べられる場合に比べ、2つの色を時間をおいて交互に見比べる場合、色盲でない人でも色の弁別能力は大きく低下する。この影響は色盲の人の場合特に大きい。図5 のようなパイロットランプは、2つの色が同時に表示されていれば微妙な差を感じることも不可能ではないが、片方の色しか見ることができないため、見分けるのは特に困難になる。 色の弁別能力の低下は、より多くの錐体細胞からの情報を集めることで、ある程度補うことができる。したがって、広い面積に塗られた色は比較的容易に認識することができるのに対し、小さな点や細い図形の色は見落としやすい。例えば、間近で見るスポーツカーが赤い色であることは容易に気付くが、緑の葉の中にちらほら赤い葉がある紅葉にはなかなか気付かない。またマジックのように太く書かれた赤線の色はわかるが、ボールペンで書かれた細い赤線は黒と見分けがつかない (図6B)。打ち上げ花火や夜空の星の色は、それぞれの光が点状で面積が小さいため色を弁別するのが難しい。花火の色なら実生活で困ることはあまりないが、学校の地学の授業で扱う星の色は、色盲の人には色の違いを実感しにくく、「さそり座のアンタレスは赤色」のように頭で覚えるしかない。 赤緑色盲の色覚の特徴でもう 1つ忘れてはならないのは、第1色盲では可視光領域が長波長側で狭くなっていることである。黄緑に吸収極大波長を持つ赤視物質は長波長の赤まで感度があるが、緑に吸収極大波長を持つ緑視物質は長波長の赤を光として捕らえることができない (図2A)。知覚的な比視感度曲線を見ると、色盲でない人や第2、第3色盲の人と異なり、第1色盲では赤の感度が非常に低い (図7)。この人たちにとって、赤は明るい鮮やかな色ではなく、暗い地味な色である。図3B の第1色盲のシミュレーション画像を見ると、赤のところで急激に暗くなっていることがわかる。そのため長波長の「濃い赤」(R、G、B = 100%、0%、0%)はほとんど「黒」に見える。 白地に黒い文字列の中で、強調したい文字を赤字にすることはごく普通に行われているが、濃い赤を用いると第1色盲の人には黒文字とほとんど区別がつかず、まったく強調されて見えない(図6B)*7。白地であれば文字が読めるだけまだましであるが、PowerPoint やカラースライドで黒や紺、濃い青色の背景に「濃い赤」の文字があると、文字が目立たないどころか読むことさえできない(図6D)。「濃い赤」を使わずに、少しだけ白を混ぜた「明るい赤」(R、G、B = 100%、20%、20%) や短波長 (オレンジ) 寄りの「朱色」 (R、G、B = 100%、20%、0%) を使うと、同じ赤でも緑視物質や青視物質を刺激することが可能となり、黒い文字列の中でも強調され、暗い背景の中でも文字が読めるようになる (図6B、D)。 同じ理由で第1色盲の人には、交通信号の赤信号の光は黄色信号の光より、暗く沈んで見える。学会でスライドを指し示すのによく使われる赤いレーザーポインターも非常に見にくい。赤色 LED を用いた電光掲示板の文字も読みにくい。電光掲示板の赤と緑の文字は、第2色盲の人にはほとんど同じ色に見えるが、第1色盲の人にはほぼ同系色で赤だけが暗く沈んで見える。たいていの場合、重要な情報が赤で表示されているので、重要な情報ほど読み取りにくいということになる*8。 このように赤視物質の変異による第1色盲では赤い光が見にくくなることがあるが、緑視物質の変異による第2色盲で緑色の光が見にくくなることはない。赤視物質の吸収極大波長は実際には黄緑にあるので、緑視物質がなくても赤視物質で緑色の光を受容することが十分に可能だからである(図2A)。 F:生物の学術図版に頻出する、赤緑色盲の人に見わけにくい色の組み合わせ
以上のように赤と緑は、赤緑色盲の人には弁別が難しい色である。しかし生物学の分野では、蛍光顕微鏡の二重染色写真や DNA チップの画像など、蛍光色素の発色の都合から赤と緑を組み合わせた画像が非常に多い
(図8)。FITC, アレクサ488, GFP などの蛍光色素やテレビモニターの緑蛍光体が発する明るい緑の光と、ローダミン、Cy3、DsRed
やテレビモニターの赤蛍光体が発する明るい赤の光は、単独なら赤緑色盲の人にも弁別できる。しかし 2色が重なった場合、緑に赤を加えた黄色が、緑とほとんど見分けがつかない(図8)。緑と黄色が弁別できないと、赤が緑に重なっている部分では、赤の領域がどこまで広がっているかもわからない。さらに第1色盲の人には、赤の部分は暗くて見えにくい(前節)*9。顕微鏡画像では広い部分が一様に同じ色である場合は少なく、ごく小さな点や細い線状の部分の色の違いを見分ける必要があるので、困難は特に大きい
(2.2 節D)。赤と緑の蛍光二重染色の画像を理解するのは、赤緑色盲の人には至難の業なのである。 G:同じ色名のカテゴリーに分類される色でも、見分けやすい色と見分けにくい色がある。 色名とは、ある範囲の色あいをまとめて 1つのカテゴリーに分類したものに付けられた名前である。当然同じ色名であっても、その中には様々な微妙な色あいを含む。そのうちの一部は色盲の人にも見分けやすく、一部は見分けにくいことがある。 たとえば緑は、黄色みがかった暖色系の緑から青みがかった寒色系の緑まで、様々な色あいがある。この中で暖色系の濃い緑は、色盲の人には茶色とほとんど見分けがつかない (図4)。鮮やかな緑である抹茶色は、色盲の人には真っ茶色に見えることがあるし (図9A)、日本の夏の広葉樹林の深い緑も、茶色と見分けがつかない。一方道路標識の緑のように青みが強い緑は、茶色と間違えにくい (図4、9B)。また明るい緑は、暖色系だと黄色や赤と間違えることがあるが、青みが強ければ間違えにくい (図4)*10。道路標識や交通信号は、同じ緑でも青みの強い色に限ることが定められている。
またE で触れたように、第1色盲の人には濃い赤は非常に暗く見えるが、それより僅かに短波長 (オレンジ) 寄りの朱色は十分明るく鮮やかに見える (図6B、D)。しかし色盲でない人には、この2色の差はごく僅かにしか感じられない (図6A、C)。 このように同じ色名で表わされる色でも、僅かな色調の違いが色盲の人への見やすさを大きく左右することがある。「赤緑」色盲という名前から「赤と緑の違いがまったく分からない」と想像される人も多いが、赤や緑の中にも違いがわかりにくい色とわかりやすい色がある。このこと自体、色感覚と色名の対応の難しさや、色名による情報伝達の難しさを表しているとも言える。 色盲の人は色への感度がおしなべて低いというわけではなく、色によってはむしろ高い場合もある。黒い背景に赤と青で文字を書いた場合、色盲でない人には赤色が明るく目に飛び込み、青が沈んで見える傾向があるが、色盲の人には第1色盲 第2色盲に関わらず、逆に赤が沈み、青色が明るく目に飛び込んでくる傾向がある (図6C、D)。比視感度曲線を見ても、第1第2色盲とも 480nm 以下の青色光に対する感度が高い (図7)。 赤緑色盲の人は、単に青が明るく見えるだけでなく、青の微妙な差を色盲でない人よりも高感度に検知できる。図10 は石原色覚検査表 (石原表)
の 1つで、色盲でない人には何も読めないが赤緑色盲の人には「5」と読める。この表を赤、緑、青の 3つのチャンネルに分解すると、青チャンネルだけに明らかな「5」の数字が描かれていることがわかる。色盲の人には容易にわかるこの青色強度の差に、色盲でない人は気付くことができない。色盲の人と色盲でない人の色覚は、単純な優劣では測れないことがわかる。 I:明度や彩度の差にはむしろ敏感である 「色」には大きく分けて、色相、明度、彩度の 3つの要素がある。このうち錐体細胞が 3種でなく 2種になることで影響を受けるのは、色相に関する判断だけである。物体の明るさを示す明度や、色の純度 (飽和度) を示す彩度には影響が少ない。色盲の人は色相の判断が苦手なぶんだけ、明度や彩度にはむしろ敏感な傾向がある。したがって、異なる色あいの弁別が苦手でも、同系色の明暗の弁別には支障は少ない。たとえば地図の段彩でよく見られる、同じ明るさで色相が異なる緑、黄緑、黄色の塗り分けは区別が非常に難しいが、同じ色相で明るさが異なる暗い緑、緑、明るい緑の塗り分けなら容易に区別できる。LED のように単色の強い光を出すものは明度、彩度とも常に最大で、差がほとんどない。したがって色相だけで色の違いを判断しないとならず、非常に見分けにくくなる。 J:自分の眼で区別できないところに色分けがあるとは考えない傾向がある 赤緑色盲の人は一部の色の組み合わせを除き、大半の色を実用上問題なく弁別でき、眼にはカラフルな画像が映っている。そのため自分の眼に区別できないところに、さらに色分けがあるとは考えない傾向がある。その結果として、塗り分けがされていることに気付かないことがある。 逆に目の前の色が一見 1つの色に見えていても、会話の文脈などから「3色型色覚の人から見れば複数の色から構成されているらしい」と意識できる場合には、色相だけでなく明度や彩度の微妙な差を感じ取ることによって複数の色を確認できることが多い。場合によっては「自分には見分けられない色がある」という意識が先走り、実際には 1色でしかない対象に「複数の色があるに違いない」と考えることもある。白と緑の 2色から成るナイジェリアの旗を見て「自分には 2色に見えるが、イタリアやアイルランドの旗のように左右の色が異なった 3色なのかもしれない」と不安に思うわけである(図11)。 おそらく色盲の人が日常最も困難を感じているのは、色を見分けることよりも、眼で見た色の名前を口に出して言うことと、耳から聞いた色名に対応するものを対象の中から選ぶことである。色と色名を結び付ける作業 (色の同定) は、色の違いを知覚する (色の弁別) のとはまったく異なった課題である。色の弁別には 2つの色の色相や明度、彩度のわずかな違いがわかればよい。一方、色の同定は、眼から入る色情報を頭に記憶してある色のカテゴリーと対照し、一定の対応を付けるわけである。 1つの色名は、明度や彩度が大きく異なる様々な色を包括している。色名は動物に本来備わる生得的な感覚ではなく、文化によって定義されたものであり*11、色のカテゴリーの境界は社会の構成員の過半を占める正常3色型色覚の人の感覚に合わせて定められている。色盲の人にとっては、この境界に従って色をカテゴリー化することがきわめて難しい。図4 の 3〜5行目には赤、オレンジ、緑、茶などの色が並んでいるが、色盲のシミュレーションではこれらの色はほとんどが茶色になっている。たとえ明度や彩度を利用してそれぞれの色の「弁別」はできても、それを赤、オレンジ、緑、茶のカテゴリーに分類する色の「同定」はきわめて難しい(図11)。 同様に、カラフルな鳥や熱帯魚を見るときや、壁紙やカーペットの見本帳を見るときなど、いろいろな色が眼に映っているが、それぞれを何色と呼んでいいかはよくわからないという状況は、色盲の人にはごく日常的である。たとえば 赤、橙、黄、黄緑、緑、茶色、青、ピンク、紫の風船を色別に仕分けることには何の問題もない。しかし風船が何色かを答えたり、色名を言われてその色の風船を選ぶような課題は、色盲の人には非常に難しい。風船を欲しがる子供に「なに色の風船が欲しい?」と聞かずに「どの風船が欲しい?」と場所で答えさせるよう質問を誘導するなど、色名を使ってコミュニケートする状況になるべく陥らないよう会話の流れを工夫するのは、色盲の人に共通した生きるための知恵である。 コンピューターのグラフィックソフトでは、文字や図形の色をカラーパレットから選べるようになっている。色盲でない人は一目見て赤や緑や茶色を選ぶことができるが、これは色盲の人には至難である。似た色が上下左右に並んだパレットから同じ色を間違えずに毎回選ぶためには、「左から 3列目の上から 4 番目」のように位置で覚えておく必要がある*12。また黄色のつもりで黄緑を選んだりしないよう、選んだ色の RGB値や CMYK値 (後述) を常に意識する。慣れた人はカラーパレットを一切使わず、直接 RGB値や CMYK値を調整して、どのような色になるかを頭で考えて指定することも多い。これらの工夫によって色盲でない人から見ても違和感のない色を選ぶことができるが、色盲でない人と色の選び方について話すと、色を数値でなく感覚で捉えていることに驚かされることもある。
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細胞工学Vol.21 No.8 2002年8月号[色覚の多様性と色覚バリアフリーなプレゼンテーション]
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